秋町隧道、六厩川橋、小簑谷隧道


岐阜県

  


                       2018年6月訪問

 ここも長年恋い焦がれつつも実現していなかった場所です。

 岐阜県は高山市と白川村の境にある御母衣湖。南から北に向けて流れる庄川を御母衣ダムにて堰き止めた人造湖です。
 南北に長い御母衣湖の西岸には国道156号線が常に寄り添い、岐阜市と富山県高岡市を結びます。
 その対岸…実は東岸にも道が存在するのです。
 その名も「岩瀬秋町線」。御母衣ダムの完成に合わせて造られたようで、当時は荘川村。なので村道として開通したよう
です。現在は高山市荘川町なので、市道になっている、はずです。

 その道を辿り先ずは第一目標の「秋町隧道」、さらに第二目標の巨大吊り橋「六厩川橋」、最奥の「小簑谷隧道」この3本を制覇する!
 その目標の前には幾多の困難が待ち構えています。
 先ずは秋町隧道までの岩瀬秋町線の踏破。車で行ける所まで進み、後は確実な廃道となっている部分を踏破する!
 さらに秋町隧道の大水没。これが一番の難関です。ウェーダーでも敵わぬ水深の為、ボートを用意するか山越えをするか…
 この隧道を突破したとしても、次の区間も絶廃道ということで、特に六厩川橋手前の道が大きく崩落している模様。
 後はこの床板ボロボロの吊り橋を渡らないと小簑谷隧道には行けない…

 考えれば考えるだけ怖気づきます。
 
 私はゴムチューブ浮き輪にネットを張ったものを持っていて、オールもあります。ウェーダーを履いてこれで秋町水没を突破しようと考えておりました。
 しかしこれでは1人しか渡れません。ので300mのビニールヒモを買って、浮き輪に結んでおいて、一人が渡り終えた後にヒモを引っ張って浮き輪を
戻してもらおうかな…などと夢想しておりました。
 実は事前にピカさんとラインの遣り取りでこういう話が盛り上がっておりました。その内、排水できんものなのか?ということになりました。
 側溝を掘って排水が一番理想ですが、先人の画像を見る限りとても無理。ではサイフォン形式で水を吸い上げて水面より低い位置で排水できない
もんなのか?理屈では可能みたいな雰囲気でした。しかしおろろんさんにその話を振ってみた所、「そんなもん排水1年かかる」とお叱りを受けてしま
いました。確かにあの水量です。あまりにも非現実的な話だったんですね…ガックシ。
 で、結局結論出ないまま、ゴムチューブ浮き輪も現実的でなければ、山越え突破だな。と考え、当初日曜日に行う予定だったため、土曜日に下見を
兼ねて、廃道の草刈り、山越えルートの確保などをしようと思っておりました。

 ところが、日曜日は生憎の雨予報!むむむ…已む無し…下見枠に入れていた土曜日を急遽本番にせざるを得ませんでした。
 当初から、様々な仲間に連絡を取っておりましたが、予定が合わない方が多く、来ることが分かっていたメンバーは、

 ピカさん、アルプさん、ゆたさん、YO314さん(以下YOさん)、カザフさん、私の計6名でした。
 しかしそこにゆたさんのお知り合いで、私もインスタで繋がっているdestrazeさん(以下デスさん)、YOさんのお知り合いで、かつて摺子発電所導水
隧道探索でご一緒だったアンシャイさんが加わり、計8名での探索となりました。
 特に心強いのが、ゆたさんとデスさんです。両氏は既に秋町隧道を山越えし、吊り橋を渡り、小簑谷隧道まで到達されている強者です。
 しかも今回は水没洞内を突破する為に、2人乗りボートを用意して下さいました!
 右も左も分からないメンバーのみで探索するよりも、先の分かるお二方がいらっしゃるだけでなんと心強いことか!
 
 俄然コンプリートの可能性が高まった一行は意気揚々と目的地に向かうのであった…

 
 市道岩瀬秋町線を秋町隧道まで向かう道中
には3つのレベルがあります。(くるまみち比)

 レベル1は荘川町岩瀬、国道156号線からの
分岐から、舗装、フラットダートの約6.1kmの
道のり。
 ここまでであれば、気を付けて走行すれば
普通車でも走行可能です。
 (安全を保障するものではありません)

 
 ここは確実に車で走破したい箇所です。

 我々探索隊も5台に車両を絞りました。
 デスさんのヴェゼルにゆたさんが同乗して
先頭に。2台目は私のアウトバックにカザフさん
が同乗。3台目はピカさんのハリアーにアルプ
さんが同乗。
 YOさんとアンシャイさんはそれぞれ自分の車
でこのレベル1の終点まで向かい、そこから
自転車で向かうとのことでした。
 で、ここがレベル2です。
 3kmの行程です。
 はっきり言って車での潜入はオススメできま
せん。YOさん、アンシャイさんが正解です。
 でもヴェゼル様は攻める攻める。
 車幅さえ確保できれば何処までも行くぞ!
という感じでどんどんレベル2を進んで行きま
す。
 そこでトラブル発生!ピカさんのハリアーが
パンク!タイヤ側面を鋭利な転石で切られて
しまって、絶賛空気漏れ中でした。
 即座にタイヤ交換スタート!タイヤ交換は私
とピカさんが主体で行い、ゆたさんとデスさん
には先に行ってもらいました。ボートを膨らませ
る等の段取りをお願いすることになりますの
で…
 幸い大した問題なくスペアタイヤに交換完了
しました。次パンクしたらやばいよね~、なんて
笑っていたんですが…
 レベル2の走行画像をアルプさんから頂きま
した。
 例えばこんな感じです。
 恐らく何回か法面崩壊が発生し、その都度
土砂をロクに除けずに踏み固めて通れるように
したんでしょうな…
 これもアルプさん画像です。
 本当はフラットな道だったんでしょうけど、この
有様です。
 ヴェゼルさんが一旦停止している箇所は、鞍
部みたいになっていて、車内からだと先が見え
ません。ゆたさんが車外に出て偵察。
 我々に向けて○のサインを頂けました。
 …って、イヤ、これホンマにイケますのん??
 なんとかかんとかレベル3手前に到着。
 兎に角、かなりアクロバティックな道です。
 SUV車で、こういう道に慣れていない方は
絶対やめた方が良いです。
 ピカ号もスペアタイヤのまま何とか到着。
 ゆたさんとデスさんは既に秋町に向けて歩い
ていったようです。
 自転車のYOさんとアンシャイさんはまだ到着
しておりません。
 そんな感じにパーティが3班に別れる形と
なりました。

 さて、ボートは1班の担当。期せずして2班と
なった我々の役割は、廃道の道普請!
 この為に草刈り機を持ってきたのですよ。
 3kmの廃道をナタやノコのみでは無理があ
る。ということで、マシンに頼ることにしました。
 振り返り。
 御母衣湖の湖岸道路として作られたと思わ
れる岩瀬秋町線。
 今やこんな秘境感満載の風景に様変わりし
ております。
 さて、レベル3は完全廃道です。
 およそ3.1kmで、55分で行けるとグーグル
様は仰っておりますが、それは普通の道であ
ればの話です。
 この行程だけでも相当堪えると思われます。
 ので道普請。
 草刈り機は頼もしいことにピカさんがやってく
れました。私は後方からノコとナタを使って最
終調整を行いました。
 程なくして3班であったYOさんとアンシャイさ
んが合流(自転車は廃道に入ってすぐ撃沈し
たそうです。)し、2班が6名となりました。
 先行するピカさんの草刈り機の音が遠くに
聞こえます。さて、私もスタートしましょうかね。

 只今の時刻、6時56分です。

 …って、いきなりこんな感じです。
 やはりもう植生は勢いづいております。
 ピカさんが刈って、私が目に付く邪魔な枝を
払う。そんな感じで付かず離れずの縦走で歩
を進めます。
 未明までの雨の影響もあり、木々がびしょ濡
れです。ナタで枝を叩くと雨粒の洗礼をたっぷ
りと受けてしまいます。
 うーむ、かなりびしょ濡れです。
 カメラがやばい…
 完全廃道になりつつも残存するコンクリ橋
梁。
 往時は車両を通していたんですよね…
 ダム湖の入り組んだ箇所です。
 対岸の道をいずれ歩くことになります。
 ちょっと視界が開けてきましたね。
 西岸の様子がちょっと見えます。
 あそこに見える橋は国道156号線の尾神橋
と思われます。

 それにしてもカメラの調子が悪いな…水滴が
入っちゃったかな…
 路肩が半分程崩落している箇所がありまし
た。
 しかし車幅を広く取ってあるので徒歩なら問
題なく通過できます。
 おおお…落ちても死にはしないでしょうが、
登って来るのが大変ですな。
 いやあ、見晴らしが最高です。
 こんな巨大なダム湖を造ってしまうとは…
 人間の力は凄い…
 プライベートビーチにいかがですか(笑)
 まあすぐにどっぷり深くなっているんでしょう
けどね…
 振り返り。
 遠くに尾神橋が見えます。
 何度でも写真を撮りたくなります。
 湖岸道路としての復旧は、秋町隧道があの
状態ですから、ないんでしょうねえ。
 ここなんて現役林道さながらの雰囲気を残し
ています。
 うっすらダブルトラックまで見えませんか?
 車道規格の幅を遺すコンクリ橋梁。
 基本的にこのコンクリ橋梁達には損傷は
見られませんでした。
 お!この看板はネットで見たことがあります。

 
       通行止め

 ここから先は荘川営林署の専用林道です
 現在○○事業実行中で危険ですので一般
の通行を禁じます。○○無断で通行されて
事故等が発生しても一切の責任を負いません

                 荘川営林署長


 だそうです。もうこの看板も遺構の一つと
なってしまっております。
 この看板が来るともう少しのはずなんです
が…
 専用林道になっても車幅は十分です。
 法面には石積みが見られます。
 組成の異なる二段の石積みがあります。
 上は平場でしょうか。
 ひょっとしたら集落か、営林署の施設があっ
たのかもしれません。
 広い路面です。
 草刈りの必要がなくて助かります。

 …そして…
 到着!草刈りしながらでしたが、特に問題
なく踏破することができました。
 
 レベル3の廃道スタート区間を歩き始めた
のが6時56分。
 秋町隧道到着が8時52分

 およそ2時間かけて漸く到着です。
 草刈り不要で歩ける季節であれば1時間半
程で踏破できるのではないでしょうか。
 ただレベル3まで車で来る必要があります
が…
 レベル2は自転車等を使うと安全で速いと
思われます。

 秋町隧道 西側坑口 第一目標達成!
 
 長年夢見ていたこの姿。皆様のご協力の甲斐あって、澱みなく到達する事が出来ました!
 いやあ、感動です。2018年6月、未だ秋町隧道は口を開けていてくれました。
 秋町隧道、と扁額がきっちり掲げられていま
す。
 この隧道のデータは各種リストに存在せず
不明ですが、対岸の国道156号線の隧道群の
竣功が1961年(昭和36年)であり、御母衣ダム
の竣功も同年であることから、この隧道も同時
期の竣功と思われます。
 さあ、第一目標は達成しました。
 次の目標は、秋町隧道東側坑口に達する
こと!
 
 それには、
 1、水没洞内を突破する
 2、山越えする

 我々にはこの2択しかありません。
 しかも「1」はゆたさんデスさんの協力が不可
欠です。
 
 さて、この先どうなるのか…

 以降、 
その2 に続く!