由良要塞煉瓦構造物群


和歌山県/兵庫県


第二部 由良地区編
赤松山伊張山軍道

  

 2013年5月、由良要塞の本丸とも言える淡路島由良地区に乗り込みました。
 その最大の目的は、軍橋と呼ばれる軍道に架けられた煉瓦アーチの橋梁探索です。
 市街地にある軍橋はネットで散見されますが、婦野谷に沿って2つの堡塁に向かう軍道に存在するという煉瓦アーチ
軍橋に関しては、ネットで見かけません。
 この婦野谷の軍道に眠る軍橋を全て発見するべく参集したのは、「宮様の石橋」でお馴染みの宮川さん、「はみ男の
日記(仮)」
のはみ男さんと私の計3名です。
 果たして全てのアーチを確認できるか!いざチャレンジです。

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 市街地に存在する6基については、「史蹟
みち」の「由良要塞軍道橋梁」でご覧
下さい。
 婦野川沿いに伸びる軍道。婦野谷を遡上
し、途中で2手にわかれてそれぞれ堡塁に
向かいます。一つは赤松山堡塁。もう一つは
伊張山堡塁です。
 それぞれのメイン軍道となるわけですが、
現在は廃れかけた登山道のようになってい
ます。
 その入口に位置する婦野川橋。徒歩によ
る探索はここからとなります。
 これが婦野川橋です。
 見た目は何の変哲もない桁橋に見えます
が。。。欄干もコンクリートですしね。
 写真はこれから向かう婦野谷へ続く道に
背を向けて撮影しています。
 プレートが計4枚あるんですが、「婦野川」
「ふのがわ」「婦野川橋」「ふのがわはし」の
4枚で、残念ながら竣工年度の表記はありま
せんでした。
 

 何の変哲もない橋梁と思いきや、下に降りてみると。。。アーチのシルエットがくっきり!
 やっぱり橋は下に降りてみないと分からんですな。

 見事な煉瓦アーチ!アーチ橋をコンクリ桁橋にて拡幅したようですな。
 他の市街地のもそうですが、よく原形を留めて改修してくれてます。改修でコンクリ巻きに。。。ってのはよくある
パターンですし。

 そして!軍橋の特徴とも言えるこのアーチ環の煉瓦配列!
 普通は小口面のみを層にして並べますが、軍橋では長手部分を併用します。
 この婦野川橋では、小口換算では巻厚5層です。それを長手併用で。。。主に2層巻きって感じになってます。
 下段が長手1小口2を交互に配置。上段は小口1長手1の位置を上下入れ替えながら交互に配置。
 実に細かい組み方になってます。

 アーチ環に長手を混ぜるとおかしくなるのが内部アーチ部分です。長手が側面に出るってことはその煉瓦の小口面は
内部アーチに出てしまう訳です。
 では内部アーチがどうなっているかっていうと。。。なんと!内部アーチがイギリス積みになってます。
 実は内部アーチがイギリス積みというのは珍しいのです。側面のアーチ環が通常の小口配列の場合は、内部は長手積み
になるんです。
 普通の煉瓦アーチなら内部アーチは長手積み。長手が混入する煉瓦アーチなら内部アーチはイギリス積みになる。。。
 うーむ、非常に興味深い。。。

 坑門はイギリス積みですな。
 これは変わりません。
 内部側壁、内部アーチ共にイギリス積み。
 うーむ、何度見ても珍しい。。。
 欠円アーチの場合は、内部側壁とアーチを
繋ぐ迫受石という切石を使う場合があります
が、ここでは煉瓦のみで対応しています。
 三角に煉瓦を整形して嵌め込んでいます。
 目地も綺麗で、非常に丁寧な造りです。

 下流側より。こっちは拡幅部分がなく、そのまま側面にでています。
その分日当たりのせいか、色褪せが進んでおるようです。
 往時の風合いは上流側の方が良く確認
できます。
 が、これはこれでいい橋景です。

 その婦野川橋から上流に100mほど。
 そこの川筋に謎の煉瓦遺構を確認しました。

 両側の石積みは堰堤跡に見えますが、じゃあ中央のこの煉瓦はナニ?って感じです。
 四角い煉瓦構造物。。。
 なんだこりゃ?
 中は空洞になっていた?感じになっていま
す。
 さらに上面に目地が残っていることから、
煉瓦積みはさらに上に続いていたようです。

 。。。うーむ。。。これが何だったのかさっぱり分かりません。
 橋脚跡?とかも思うんですが、空洞が気になります。堰堤と橋梁のコラボ物件だったらレアですが。。。
 まさかのサイフォンとか?ここで水を取り込んで、サイフォンの原理でどこかに水を吸い上げたとか。。。?
 いや、非現実的か。。。妄想は尽きませんな。

 おっと、ちょっと油売り過ぎやな。。。ってことで、軍道進軍を開始します。 
 ここが軍道です。
 まだ市街地に近いため、コンクリ舗装されて
います。
 そしてここを潜る小川が。。。早速煉瓦
か!?
 残念ながら石桁でした。
 しかし石橋ハンターの宮川さんは大喜び。
 よかったです!
 因みにこの小川は婦野川ではありません。
 婦野川と軍道はしばし別の道を歩みます。
 その再会地点こそ。。。ふふ。

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 場所はここです。
 婦野川の支流って感じですな。
 どんどん山に向かいます。
 またもや軍道下に違和感が。。。
 残念ながらこれも石桁。
 それにしてもすんごい低さです。

 途中で道を間違ってえらい苦労しましたが、何とかこのような切り通しの道に。
 完全に山道に変わりました。しかし山道にしては結構道幅あります。これが軍道たる所以でしょうか。
 その切り通しの向こう側にお社が。
 「もとこし 地蔵尊」

 だそうです。
 続いた上りが切り通しから納まり、フラット
な路面が。そう、路面と呼べるほど道幅が
あります。
 路肩を覗けば、丁寧な石積みが確認でき
ます。
 しかし煉瓦アーチがいつまでたっても出て
こない。。。
 と思っていた矢先。。。しばしのお別れ
だった婦野川が帰ってくるのが見えます。
 その婦野川を軍道が越えそうやな。。。
 と思っていましたが。。。

 次回!遂にその姿を捉えます!

 以降、
後半戦に続く。