由良要塞煉瓦構造物群


和歌山県/兵庫県


第一部 加太地区編
深山第一砲台前半戦

  


 2011年10月、関西屈指の戦争遺跡、由良要塞にやってきました。
 和歌山市加太から友ヶ島を挟んで淡路島の由良まで。瀬戸内海、大阪湾を守る要衝として位置づけられていた土地で、内海に侵入しようとする
軍艦を迎撃するため、
合計17か所に砲台が置かれたそうです。
 そして!この地区にはそう!煉瓦構造物がたくさん眠っておるとのことです。そいつらをハントするためにやってきました。
 まず第一部では和歌山県の加太地区を攻略に参ります。

 加太地区には砲台が5か所、堡塁が4か所、計9か所あります。
 砲台は対海上がメインですが、堡塁は陸戦用で砲台を守る砦だったようです。
 
 で、加太地区で最もメジャーな遺構は1番の「深山第1砲台」です。まずはここから攻略しようと思います。
 
 早速やってきました。
 「深山第一砲台」へは遊歩道が整備されており、
簡単に行くことができます。
 ご覧のように煉瓦で敷き詰められた遊歩道が伸
びています。

 アプローチポイントはここです。
 県道65号線から休暇村紀州加太へ向かう道を
遡上します。

 
 休暇村へ至る手前の駐車場に車を停めます。
 そこから茶色のルートを歩けば砲台跡はすぐで
す。
 振り返れば休暇村への車道が見えます。
 左手付近に駐車場があります。
 後付け?であろう煉瓦の道を進みます。
 しかしこれだけ敷き詰めた煉瓦道も数少ないで
しょうな。
 ものの5分程度で深山第一砲台に辿り着きま
す。
 ここは誰でもこれるスポットですよ。
 広っ
 広い空間一面に煉瓦が敷き詰めてあります。
 すごい数の煉瓦ですな。。。
 周りは石積み、笠に煉瓦を施した壁で囲まれて
います。
 ここは何かを設置していたであろうスペースが
あり、右手には階段があります。
 広い空間から先にまだ道は伸びています。
 ?おや?案内板の奥辺りが凹んでいるような?
 おお!?切れ込みがあり、地階に何かあります
よ!?
 階段があります。
 こんな隙間に。。。煉瓦の部屋が?

 欠円アーチの部屋。。。アーチ部分はコンクリートで補修?されていますが、当時は煉瓦アーチだったんではないでしょうか。
 一回り大きな煉瓦長手一個分出っ張っていますが、そこの煉瓦がコンクリートで覆われずに見えています。
 窓が2つに入口1つの仕様です。入口の笠、窓枠の笠と桟には切石が嵌め込まれています。
 それ以外は全て煉瓦仕様です。
 入口両側に3か所穴の開いた石積みがありま
すが、これは扉の蝶番みたいなのが付いていた
跡でしょうか。てことは観音開き?
 封鎖しないところに心意気を感じます。
 そして。。。
 煉瓦積みの教科書みたいな施工が!
 これはイギリス積みです。しかし!他の大部分
で見られるイギリス積みと呼ばれている組積法は
実は正式にはイギリス積みではありません。
 厳密にはこれが正解。
 違いは端部の処理の違い。
 正式なイギリス積みは端部一個隣に「羊羹」と
言われる、通常煉瓦を縦に半分にしたもので仕上
げます。
 参考例ですが、殆どの端部処理はこのように
なっています。端部一個隣の煉瓦は小口になって
いるのがお分かり頂けるかと思います。
 厳密にはこれは小口ではなく、「七五」と呼ばれ
る通常煉瓦を横に3分の2にしたものが使われ
ています。
 これが日頃目にするイギリス積み、厳密には
オランダ積みの範囲に入ります。

 従って、このようにお手本のようなイギリス積み
が見られるのは非常に貴重です。
 細か〜い点ですが妙に感動してしまいました。
 さてさて講釈はさておき、内部です。
 おおお。。。妙な空間です。奥行きはそれほど
なく、むしろ狭苦しく感じる欠円アーチ状の空間
です。元々は全面真っ白にペイントされていた
ような感じがします。
 ここは棲息掩蔽部(セイソクエンペイブ)といいます。
 弾薬等を保管しておくスペースだったようです。
 奥から振り返り。アーチの煉瓦は一回り大きな
ものを使用しています。
 非常に丁寧な造りです。第二次世界大戦時の
急造ではないのがこの点で分かります。
 因みに深山第一砲台の竣工は明治32年だそう
です。日清戦争後、日露戦争前の時代です。
 そして、この部屋は内部で隣と行き来できる
ようになっています。
 隣の部屋です。
 白いペイントがより残っている雰囲気です。
 因みに内部は真っ暗ですんで、懐中電灯は
必要です。
 先ほど降りてきた階段です。
 完全に地下一階ですな。
 そして振り返って角を曲がればさらに3部屋。
 合計5部屋あります。
 そして角の処理がまた丁寧!
 円弧形煉瓦を使用せず、小口4列のみで円弧
を実現しています。その代り半径は大きくなりま
すが。
 参考です。
 円弧形煉瓦を使用すればこのようなタイトな
角処理が可能です。
 で、ここの3部屋は内部で繋がっておらず、個室
になっています。
 で、各部屋の天井に必ずこうしたパイプ?が
刺さっています。
 換気口でしょうか。
 この角度でみると、側壁とアーチ部分の煉瓦の
大きさの違いが分かりますねえ。
 目測およそ2倍です。
 振り返りです。
 ここの3部屋は先の2部屋よりもさらに狭いで
す。
 こっちのが弾薬庫っぽい感じがします。先の
2部屋は兵舎みたいな役割をしていたのかもしれ
ません。
 反対側の階段です。
 左手の側壁も大分高いんですが、非常に丁寧
な造りです。
 100年以上経っても全くもっての安定感。コンク
リートならひび割れの心配がありますがねえ。
 改めて煉瓦の長持ち具合を再認識しました。 
 地上に上がって来ました。
 右手には遊歩道が整っています。

 早速美麗な煉瓦造りを堪能できました。
 次は隧道(微妙な感じですが)も出てきますよ!

 以降、 
後半戦 に続く!