旧寄宮トンネル


山陰本線 八鹿−江原間


 


 京都府福知山市と兵庫県朝来市を東西に突っ切る山
陰本線。国道9号線と県道63号線が軽く峠を越えるのに
対して、鉄道のみが長大トンネルを使って平坦に突っ切
ります。本当に少しも山を登ろうとせずに、特に兵庫県側
は、ここでトンネルにはいっちゃうの?と思えるぐらい大
きな山肌のけっこう前からトンネルで突っ込んでいます。
 その夜久野トンネル、延長は1,529mと結構な長さを有
するわけですが、これにも廃トンネルが存在するという。
。。。
 探索は兵庫県側からです。京都府側は。。。無理です。
きっと。。。
 写真の奥に見える道が国道9号線。手前に伸びるのは
地元道、左手に走る山陰本線は早々とトンネルに消えて
います。で、旧路面はというと。。。もう少し地表路線で
延長を稼ぎます。地元道の左の窪みから、国道の橋を
抜けて行くのが旧路線です。
 振り返っても現行路線は見えません。
 実は右手の国道ガードレールから左に目をやると、少し
ふくらんだコンクリートの構築物を見ることができると思い
ますが、あれが、トンネルの始まりです。
 すんごい低い位置から突入します。
 路面跡に降りて振り返り。
 地元道から見下ろすと、一見川床のように見えました
が、降りてみると結構フラット。現役時の幅を残している
ように感じます。
 うをを。。。すさまじい。。。
 トンネル方面は籔が背丈以上に密生しています。
 季節は秋口ですが、やはりはんぱない。。。
 ざぶざぶざぶ。。。ぶくぶくぶく。。。

 籔の海に溺れつつも少しづつ前進。。。橋が目の前ま
で迫って来ました。。。もうちょい!
 。。。。。。。。。ぶはっ!

 籔の海から一先ず救出されました。
 なんでわざわざあそこから泳いできたかと申しますと、
見てもらうと分かりますが、橋梁の工事中(当時は作業
していない)で近寄りがたかったからなんですが。。。

 。。。さあ、籔漕ぎを超えた籔潜り第二弾に突入です。
 途中籔トンネルにも遭遇するなど、兎に角はんぱない
猛籔ぶりです。
 自然に徹底的に還ろうとしています。
 石積み擁壁傍に設置されている、何かしらの遺構。
 本当に何かしらです、よく分かりません。
 第二弾籔潜りも結構な長さがあり、へこたれます。
 明らかに背丈よりも伸びた低地植物、やりたい放題
です。
 厳しい。。。
 も、もう限界やあ〜
 と思っていた先に見えたのは一筋の光明ならぬ、一筋
の闇明(←どう読むんだ)が。。。
 こいつは近いぞ!
 ををを。。。
 もう凄まじい状況下での遺りっぷりです。
 笠石上で一生を終えた木々が坑門前にダイブしていま
す。
 これぞ遺跡!
 笠石、帯石共に少々凝った石材を使用しています。
 迫石巻厚は5層のようです。
 洞内です。。。現行路線1,529mよりは短いものの、それ
でも1kmを超える長大廃トンネル。
 よとと的には今まで経験ない長さです。
 当然ですが向こう側の光は見えません。
 苔むした石積みに残された設備の遺構です。
 配線まで残るケースはあまり見ません。

 西口、兵庫県朝来市側坑口です。その坑口付近は、
廃されてからの年月を物語っています。
 当然ながら、真っ暗。。。先など到底見通せない、真の
暗闇が支配する空間です。
 路面はフラットであり、歩行にはさほど支障はありませ
ん。
 長大トンネルということもあり、退避坑は大きいサイズ
のものが等間隔に存在します。
 ライトで照らして、突然巨大なへこみがあると、分かって
いながらもドキッとします。
 路面状況はバラスが敷き詰められ、フラットです。
 この辺りの廃トンネルでは枕木の残存はありません。
 武田尾のメジャー方面には多く残るのに、何ででしょう
か。。。
 ああ。。。光が遠のく。。。まだ200m程度ではなかろ
うか、あと最低800mはあります。
 普段歩くスピードでは絶対歩けないので、時間は相当
かかりそうです。
 おお?
 さっき、枕木はない、と言いましたが、埋っているだけ
なのかな?なんとなくあるっぽいです。
奥に進むたびに白化が進む洞内。退避坑も真っ白で
す。
 どんどん光が遠のきます。なぜ光が欠けているのか。。
。謎です。。。なんもなかったはずやのに。。。
 相変わらず東側の光は見えません。
 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 んん???

 な、なんだこりゃ???

 退避坑じゃない。。。よな?これ?
 もともと退避坑でそこを扉の形だけ残して塗り固めた
感じ。。。こ、怖い。。。
 恐る恐る中を見ます。。。奥行きはそんなにないな。。。
 もしや横坑か斜坑なのかと思ったんだけどなあ。。。
 。。。何でしょうこのスペースは。。。
 入り口は部屋の入り口のようになっていましたが、
特に何もありませんが。。。
 上部が何故かトタンと鋼材で補強してあります。
 何か資材置き場にでも使っていたのでしょうか。謎の
空間です。
 明らかに他の退避坑よりも奥行きがあるので、何かを
目的としていたのは確かでしょう。
 もし、横坑跡だったとすると、現行路線にぶつかる方向
です。トタンを剥がしたら竪坑があったりして。。。
 長い長いよ。。。この廃トンネルは。。。
 さすがに1000m級、凄まじいですね。。。しかしここを
クリアできないと、将軍「青山」(3000m級)には挑めま
い。。。

 
 。。。んん?うっすら明かり?
 極限まで眼球が暗闇に慣れたお陰で、少しの明かりも
見逃しません。少し右に折れつつその先に明かりが見え
るっぽいです。
 キタ!
 完全なる脱出口の明かりです!
 ああ。。。こんなにお日様の光がありがたいとは。。。
救いの手と思える機会は滅多にありません。
 出口付近は強力な鋼アーチ支保工で補強されていま
す。果たして東側はどういう風になっているのでしょう
か。。。
 おっと。
 最後の最後に浸水していました。しかし水溜り程度な
ので、全く問題ありません。
 ついに辿り着きました。東側、京都府福知山市側坑口
です。
 しょっぱなからもう怪しい雰囲気です。だってもう現行
路線見えてますもん。
 振り返れば頑強な補強の先は左にカーブしつつ暗闇
に飲み込まれる廃トンネルの姿。。。
 ここ。。。も1回戻らんといかんのやねえ。。。はあ。。。
 。。。。。。。

 本当にえらい所に出ます。
 ここから200mも行けば上夜久野駅です。こちら側か
らの進軍はほぼ無理ではないでしょうか。
 ちょこっとだけ出てみました。
 こちらも立派な坑門を残しています。
 よく見ると坑門右半分がのっぺらぼうになっています。
新トンネル建設の影響を受けているようですね。
 新旧夜久野トンネル、京都府福知山市側坑口横並び
です。
 なかなか叶わぬこの風景。術は1000m超の暗闇を
制す以外方法はないのであろうか。。。

 ああ。。。戻りたくない。。。