2017年5月訪問
2017年3月、中央本線煉瓦暗渠探索時に見か けた謎の構造物と石アーチ。 岐阜県は土岐市土岐津町。土岐川と並行して 走るのは、県道385号線と中央本線。実は対岸 の南側にもう一本並行して走るものがあります。 それを知ったのも帰宅してからだったのですが、 実はあの構造物は発電所跡だったそうです。 そう、もう一本並行に走っていたのは、水力 発電所の導水路だったのです。 当時のターゲットは中央本線であったため、気 になりつつもスルーしましたが、そういう現実を 知り、無性に行きたくなった次第であります。 |
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土岐川発電所。それがこの構造物の正体。 といっても建屋は残っていないようで、基礎部分 が見えるのみ。放水口もコンクリで塞がれている ようです。それでも!導水路は土岐川に沿って あったというんですから行かない訳には行きま せん。 というのもこの発電所、多治見電燈所が第一発 電所として建設したんですが、竣功がなんと1906 年(明治39年)10月。導水路は約1kmで、ネット で見られる論文によれば、2連の石アーチがある というではないですか。これは行くしかないでしょ う! かくして機会を窺っていたわけです。 いつかあの放水口の前に立つ! 参考文献 ・多治見電燈と土岐川における発電所の歴史 茂吉 雅典氏 ・岐阜県の小里川発電所と与運橋 −大正期の堅固な石造水力発電所− 山根 巌氏/井上 肇氏/松島 秀夫氏 |
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その機会は意外と早くやってきました。 2か月後のGW。年2回しかない中央本線の愛 岐トンネル特別公開があるといいます。ちょうど この土岐川発電所は近いです。 それなら2日に分け、愛岐トンネル観光と多治見 電燈が遺した4つの水力発電所を追いかける旅、 として、オフ会を開催するに至りました。 日程は2日間。最終日は愛岐トンネルに取って あります。ので初日は多治見電燈ツアーと相成り ました。まずは多治見電燈第一発電所!後年は 土岐川発電所という名称になっていますが、やは り前者の方が格好いいですねえ。 この初日探索にご同行いただいたのは、mt.tell さん、ペッカーさん、宮川さんの3名です。 国道19号線の袂、ちょうど土岐川に妻木川が 合流するポイントに車両を停め、ここから約1km とされる導水路を追い求めます。 |
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地理院地図ではこんな感じです。 ちゃんと取水堰堤から導水路の点線、発電所の マークまでが載っています。さすが地理院。感服 です。 |
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ここから土岐川を下ります。 上部が国道19号線となっております。 |
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国道19号の橋を潜るとすぐ、歩きやすい築堤が なくなり、岩場となります。 |
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少し歩きにくい岩場を慎重に歩くことになります が、すぐに構造物が見えてきます。 |
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また新たな築堤が現れます。 で、何か鉄扉のようなものが川面に飛び出て ますが…? |
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放流口のようですが、貼ってある河川許可標 を見ても、発電所施設には無関係と思われます。 |
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その築堤奥手にはこのような構造物が。 先の茂吉氏の論文の写真を見ると、この真ん前 に取水堰堤があったようです。 で、石積み上部に建屋があるのも確認できま した。 この堰堤はなんと木製ダムだったそうで、洪水 時には「流れ橋」のように流れに逆らわずに基礎 を守る構造だった模様です。詳しくは論文をご覧 下さい。非常に興味深いです。 ここに木製の堰堤があり、手前に3か所の取水 口が、これも写真で確認できますが今はもう痕跡 すら確認できません。 |
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木製ダムがあったであろう方向です。 その痕跡は一切見られず… 石積み堰堤との大きな違いですな。 |
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ここからの探索は非常に危険です 自己の責任において判断下さい 築堤が途切れると、道がなくなります。 取り敢えず行ける所まで進軍することにします。 この辺りから「中部電力」と「建設省」の石柱が 頻繁に出てきます。 |
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竹藪の中に空石積みが。 導水路がらみかどうかは不明です。 |
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竹藪を抜けると、とうとう足場も拙い岩場を歩く ハメになります。 足を滑らせれば土岐川にドボンです。 皆、黙々と障害を乗り越えていきます。ここにいる 4名はそれぞれダム、林鉄、石橋、煉瓦マスターを 自負する者ばかり。各々が数々の難所を経験して きていますが、それでもこの行程は難儀な代物 です。 |
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んんんん??? なんだ?なんかバルブが…? |
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本当にバルブです。こんな所に… 恐らく導水路は絶賛隧道中と思われます。 隧道に横坑があって、その出口と思われます。 排砂門ということでいいんですかねえ。 |
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今は完全に埋没してしまっております。 |
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ホント歩き難い… 流量が比較的少ないので助かります。(それでも 深みに落ちれば流される勢いはあります。) 遠くにまた石積みの構造物が見えています。 |
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振り返り。 かなり進んできました。 |
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石積みに薄くコンクリを張った築堤が現れまし た。 |
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振り返り。 岩オンリーの中洲です。長年の水流に洗われて 面白い形をしています。 |
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またも謎の石積みが現れました。 上部には手摺りがあります。 |
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先端部分は明らかに補修の跡があります。 現役で最後まで使われていた構造物のようで す。 |
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下流側に回ってみると… ああ…穴の跡っぽい。 これは沈砂槽ではないでしょうか。 |
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上部にあがってきましたが…? 予想に反してフラットです。 ???槽が埋まった? …だそうです。 |
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山側に凹みが。 ここから本格的に隧道になるのではないでしょう か。 地理院地図の導水路表記が正しければ、川に 沿っていた導水路が山側に折れる箇所がここでは ないでしょうか。 掘ったら穴が出てくるかも(笑) |
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さあ、ここからです! ここからが本格的にヤバくなります。 先程、デンジャーゾーン開始を告げましたが、 正直あのぐらいはよくあります。 しかし…ここからは本気でヤバくなります。 |
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はい。川伝いの進軍、終了… 一発で駄目なことが分かります。 ということは… |
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…高巻きです。 いやあ、なるべく避けたい最終手段なんですよ ねえ。これで駄目なら詰みになります。 |
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仕方なく岩場をクライムします。 やれやれ… 対岸には中央本線のトンネルが見えています。 そして導水路は完全に山中に飲み込まれていま す。再び会うにはこの山塊を越えねばなりません。 |
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危険な高巻きを越えると、また川伝いに岩場が 出てきます。 さらに上を高巻きしていたmt.tellさんが先に着い ています。さすがダムマスターっす。 |
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ハードな岩場を越えた所に、一見すると分から ない人工物が山側にあります。 |
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ゲートの跡です。 どうやらここも排砂門のようです。 が、大崩壊して原形を留めていません。 |
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絶望的な状況ですが、僅かに穴が! これが横坑であることを確信させました。 |
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場所を変えて見てみると、奥が見通せます! かなり長い横坑のようです。 しかも冷気が漏れています。 うーむ、しかしいかんせん隙間が狭すぎます。 カメラ搭載のキャタピララジコンが欲しい! |
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すぐ下流の別の穴。 なにこれ?こんなことってあります??? |
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ちゃんと開口しています。 何?これも横坑なんすか??? |
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うおっ 結構広い!? 土砂が溜まりまくっていますが、意外と広い空間 が… |
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無理矢理狭小穴から潜り込みます。 内部はしゃがんでないと動けないほど天井は低 いものの、そこそこ大きな空間です。 |
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一方でこんなにも小さな入り口… ホンマにナニコレ? |
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で、右を見ると… ありゃ?もっすごく低いけど大きな口が外に向け て開いています。 低すぎて匍匐前進でしか行けそうもありません が、外から回り込めるようなので行く意味もありま せん。 |
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外から回り込むとこんな感じです。 あああ…なんか半田の地下壕を思い出すような フォルムです。 しかしこれは自然の洞穴ではないでしょうか。 現状人工的な雰囲気はしませんが…埋まり過ぎ ていて何とも言えません。 |
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ちょっと引きで。 導水路の隧道であっても違和感ない感じですが、 場所が違いすぎます。 |
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東海環状自動車道の橋梁が見えてきました。 ここから先もまたデッドゾーンとなります。 ふう〜やれやれ。 |
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地理院地図です。 高速の橋梁が見えて来たということは、導水路 も隧道から明かり区間に出てくるまでもう少しとい うところでしょう。 以降、 後半戦 に続く! |