旧東海道本線 静岡県焼津駅〜用宗駅間
その5
2016年1月訪問
メインである石部トンネル遺構群を堪能し、大満足でしたが…そう、裏のメインがもう一つ存在します。 しかもとんでもなく特濃な… その物件は、海沿いにポツンと取り残されるようにある小浜地区にあります。 2016年1月現在、街に出る唯一の車道である県道416号線の南側が崩落し通行止め。従って南側の焼津市街方面 に向かうためには先ず、北側の用宗地区に出て国道150号線で迂回する必要があります。 万が一、北側でも崩落が発生した場合は完全に陸の孤島になってしまいます。 |
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北が下向きになっている看板ですが、状況 が分かります。 今居るのが左下(北側)の小浜地区。 そこからたけのこ岩トンネル、当目トンネル 間が通行止めになっています。 |
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時間の都合で私は行けませんでしたが、災害箇所はこのような状態だそうです。 これは北側から焼津市街方面を撮影しているようです。 …えげつないですね…これは素人目に見てももはや手の施しようがない感じです。 |
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小浜地区の孤立を避ける為の対策は、やはり崖の修復よりも新トンネル掘削を選んだようです。 名前は仮称ながら、「浜当目トンネル」としたようです。延長905m、2015年11月16日現在の進捗状況は274mだそう です。よって、現在はもう少し伸びていると思われます。 供用開始は不明ですが、島田土木事務所のトンネル工事看板には2017年(平成29年)3月17日まで、との記載があり ます。2年後ぐらいには開通できそうですかね。 それはさておき、今は小浜地区の裏ステージに向かわねば… |
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この小浜地区の位置は、旧石部トンネルよりもずっと南側。そう、旧磯浜トンネルがあった場所です。 しかしトンネルの位置は直線距離で300m以上離れています。そんなところに横坑なんて存在するの!?ってな感じ ですが…これがまたあるそうなんですよね…驚愕の事実です。 場所はこの地区唯一の沢といっても良い場所、平沢川水系平西沢。 |
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沢の右手、沢が登りに入る傍ら平面を保つ場所の奥に…何か見えます… |
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本当にありやがった… すごい…まさか本当に300m超掘りぬいたのか… |
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本当に何てこったですよ…殆ど埋まりかけながらも立派な煉瓦坑門… 側壁の空石積みや坑門上の平石積みなど非常に丁寧な造りです。 |
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2層の恐らくは半円アーチ。笠石まであります。 この横坑は何のために造られたのでしょうか。横坑を穿つ理由は、両坑口から掘り進めるのと同時に内部からも 堀り進めることにより工期短縮を図ったり、ズリ出し作業の効率化などだと思うんですが、ここに関しては疑問です。 この横坑が貫通する頃には坑口部隊が通り過ぎてるのでは?なんて思ったりします。 その辺の詳しい経緯は不明ですが、兎に角内部に入ってみることにしましょう。 せ、狭いな…ずりずりずり… |
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うおおおおお…!いきなりの大水没…そして…やはり長い… なんという廃景か…これはもう完全に水路です。問答無用のウェーダー水位です。 |
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内部から見るとほぼ埋まっています。よく開口していたものです… そして本当にすぐ水没! |
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アーチが2段階に分かれています。手前が増設でもされたのでしょうか。 で、奥は素掘りとなります。 |
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こんな感じです。上部がおよそ1層分の違いがあります。これが何を意味するのか… |
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坑門付近の煉瓦アーチは途絶え、いよいよ素掘り区間に… |
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ここだけ見ればお馴染みの(当方比w)鉄道暗渠って感じです。しかし実態は… |
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坑門の手前に素掘り洞内が…。鉄道暗渠なら有り得ない状態です。 しかし素掘りにうまく沿うように丁寧に積まれてますねえ…。 |
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ううう…深い…本当にウェーダーぎりです。水圧により吸い付く感覚を久し振りに感じます。 恐怖です…。 最初に潜ったのはヨッキさんと聞いてますが…。よ〜初見、NO情報、NOウェーダーで入っていったな… 因みに入洞は、とのたまさんと空母さんです。空母さんは2回目です。2回入ったのは恐らくこの方だけかと… みんな変態や(笑) |
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泥濘も多少あり、瓦礫や凸凹に足を滑らせながら恐る恐る前進します。 本当、何故にこんな横坑掘ったの!? 因みに空母さんによると、前より水深上がってるかも、とのこと。やはり2日間振り続いた降雨の影響でしょうか。 |
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あああ、出口が遠のく… 一人だと心細いですが、今回は2人の心強いメンバーが一緒なので助かります。 |
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多少水位が下がってきました。ということは高低差が0ではないということです。 磯浜トンネル方面に向けて微妙な傾斜が付いているようです。その辺も計算されているはずです。排水性を高める 為にはそうするはずですから。逆ではえらいことになります。 水力発電所の導水路でもそうですが、この微妙な傾斜の設計を明治以前からやってきたっていうんですから驚きです。 |
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しかしやはり一直線で掘り進めるのは困難だったようで、このようにうねっている箇所がいくつもあります。 |
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順調に、徐々に水位が下がっていきます。洞内は相変わらずうねっています。 しかし長い…入洞からおよそ10分経過しています。 |
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さらに10分経過。20分でようやく水がほぼ引きました。 この間、似たような景色しか撮れないのと、足元の悪さによる疲弊により殆ど写真撮ってません… と…奥に何か人工物が!? |
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おおおお!煉瓦アーチだ!!! こんな奥底に煉瓦アーチが… |
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見た所、先はまた素掘りのようです。 よってこれは覆工?何故この部分だけ??? 2層の半円アーチ、隙間は坑門として煉瓦を嵌め込んでいます。いやあ細かい。 |
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こんなところで煉瓦アーチをお目にかけられるとは… 側壁はしっかりイギリス積みです。 |
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煉瓦アーチから振り返り。辛うじて日の光が届いています。 とんでもない距離です。 |
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こちらが反対側の坑門です。 右上の煉瓦などは隙間に応じて削ったものを挟んだようです。細かーい。 |
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覆工煉瓦アーチからはすぐに閉塞点。片側に謎の石積みがあります。 |
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なんなんでしょう。反対側にも石積みを行って煉瓦で巻く予定だった、とか?謎です。 で、振り返ると… |
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すぐに閉塞地点なのでありました。 入洞13時30分。到達13時53分。たった23分、と思われがちですが、洞内腰丈水没歩行を伴う進軍はまさに鈍牛。 凄まじい遠さを感じました。 木製のバリケードをした上でコンクリで固めたようです。どこにも隙間はありません。 しかしながらとおーーーくで電車の通過する音が聞こえ、風の出入りを感じます。 恐らくこの先は旧磯浜トンネルの新石部トンネル転用区間と思われます。 面白いですよね。電車が入洞する瞬間に空気がピストンで押されたかのように僅かな隙間から噴き出します。 そしてこの横坑との接続区間を過ぎると一転、吸い込みに入ります。電車に引っ張られた空気が一気に吸入されていき ます。こういったことで空気にも質量があるってことを実感しますねえ。 |
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最深部より振り返り。数々の閉塞隧道を潜ってきましたが、ここが最も辛いかもしれません。 距離もそうですが、その狭さ、水没具合、歩きにくさなどトップクラスです。 これを往復しないといけないってのが閉塞隧道の最大のポイントですよねえ… 兎にも角にも旧磯浜トンネル横坑制覇! |
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14時21分、無事生還。およそ50分間もたった一本の洞内に留まりました。 いやあ、腰が痛い…地味に背丈未満の部分も多かったので疲労が蓄積しました。 |
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最後にとのたまさん撤退画像その1、その2(マウスオーバー) |
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その3、その4(マウスオーバー)です。 そして! これを早く出したかった! 空母さんが2回目入洞ということもあって動画を撮ってらっしゃいました。 内部の様子をとくとご覧ください! 小浜集落に残る横坑 by.空母欲奈氏 完 |