奥羽本線庭坂~関根間現役暗渠、廃線構造物群


奥羽本線(山形新幹線) 福島県庭坂駅~山形県関根駅間



その8

 


                  2018年8月訪問

 怒涛の初日は精根尽き果てた感じでしたが、
2日目も予定がてんこ盛りです。
 折角700kmもかけてやってきた聖地、何とし
てもこの目で全てを見たい!
 その一心のみで、疲れの残る朝を起き出し、
目標のポイントに到着。

 場所は板谷駅から踏切を南に渡り、県道154
号線を五色温泉方面に少し。すぐに松川(山形
県側の名称は前川)沿いの林道に入り、ひたす
ら下って行った所です。
 それがここ。
 ここから先は車では行けません。
 夏場なので、少し車高に余裕のある車なので
ここまで来れました。
 時刻は5時42分。
 昨日あんだけ打ちのめされたのに、ホンマ
よーやるわって感じです。
 行く先に、
 「松峰山石碑ここより300m」
 という木製案内板が。
 すぐに松川を渡る橋が現れます。
 ゲート付きです。
 大笹生発電所取水口管理用橋梁
 だそうです。

 
 グレーチングの橋梁です。
 管理用ですが、がっつり封鎖ではなかったの
で、通らせてもらいます。
 轍付きの未舗装路が先に伸びます。
 大笹生発電所の取水口にはすぐ辿り着きま
す。
 ここから管理用林道を離れ…
 山手の緩い細道を登って行きます。
 何のための道なのか…
 夏場でも途切れることなく山の中に誘われ
ます。
 道は緩いまま森の中を進みます。
 廃線跡はどこなんでしょうか?
 ???

 やたら広い空間に出てきたと思ったら…
 いつの間にか廃線跡を歩いてる!?
 ええ?いつの間に?どこで合流したのか全く
分かりませんでしたが…

 そんなことを考える余裕もなく、目線の先に
暗い影が…
 しかもこの場所って、ちょっとした築堤っぽい。
 築堤下を潜る穴はないのか…?
 築堤を両側から隈なく調査します。
 しかし穴はなく、謎のコンクリがあるぐらいで
した。
 こちらは山側。
 そしてこちらが谷側。
 両側にコンクリ。穴があって然るべき、ってな
感じですが何にもありません。
 うーむ…?
 そのうち、シェッドの近くにまで接近しており
ました。
 うーん、穴があってもおかしくないナイスな
築堤でしたが…
 コンクリの分厚いシェッドです。
 見た目にも頑丈な感じですねえ。
 路盤後に上がりました。
 山側はいつの間にか石積み擁壁に。
 そら、穴、ないわな。
 ちょっと引いて正面の廃景。
 後年拡幅されたであろう、コンクリ製の
シェッド。
 ぱっと見、土被りは殆どなさげですが…?

 取り敢えず内部を確認します。

 
 
 おおお…何と見事な…
 思わず溜息が洩れる程の美麗な連続アーチ…コンクリート製ならではの重厚感に包まれています。
 差し込む自然光がさらに良い雰囲気に。
 枕木が残ってますね!
 振り返り。
 何とも言えない、神秘的な廃景…
 半円アーチの柱を狭い間隔で配置しています。
 側壁の控壁(バットレス)の役割と、アーチの
部分で天井を棚受けのように支持をする構造の
ようです。
 また、天井中央部にも一本、梁のようなコンク
リが通っています。
 側壁も山側に傾斜していますし、かなり頑強な
印象を受けます。
 途中からよりトンネルトンネルに近い構造の
シェッドに変わります。
 谷積みで山側に傾斜していた側壁がトンネル
の側壁に変わりました。
 半円アーチの明り取りが良い雰囲気です。
 トンネルになる寸前の明り取りが何故が乱暴
に広げられています。
 車両か重機を通れるようにしたんでしょうけ
ど…
 アーチのシェッドの続きでトンネルが始まる
ため、坑門が視認できません。

 これが、
 
 
第二大日向トンネル
 (11号トンネル)
 西側坑口


 確かこのトンネルは…
 空気が澱んでいます。閉塞隧道ならではです
な。
 そしてこのトンネルの側壁は切石積みです。
 しかもフランス積み!素晴らしいですね。
 振り返り。
 トンネルからコンクリシェッドへ。
 靄がきついですね~
 路盤のバラストが少ないので、インバートが
少し出てきています。
 待避所。
 2層のアーチが煉瓦で、他は切石仕様です。
 先程からアーチが目まぐるしく表情を変えてい
ます。かなりの補修が入っていますね。
 錆び落ちそうな碍子が残存しています。
 靄で見づらいですが、この洞内、違和感を感じ
ませんか?
 やたら楕円になっているような…
 そう、ここは煉瓦アーチがごっそりと取り除かれ
て、コンクリートアーチになっています。
 
 楕円アーチに入って振り返り。
 見えますでしょうか。アーチに段差ができてい
ます。
 あの段差部分、まるごと煉瓦を抜き取ったよう
です。
 煉瓦の天井が抜け落ちた楕円の洞内。
 ここにも待避所。
 すぐに楕円洞内は終わり、煉瓦アーチが見え
てきます。
 やっと補修なしの本来の洞内が拝めました。
 しかし洞内の澱みはMAXに…そろそろ…
 やはり…
 土砂が急速に増え、閉塞が見えています。
 ???
 謎の抉れです。
 側壁の石積み一段と、コンクリ覆いの2~3層
の煉瓦が剥がれて岩盤が見えています。
 土砂に緩やかに埋もれて閉塞です。
 左側にコンクリートの擁壁が。
 どうやらここも現行路線と重複する個所のよう
ですね。
 重複するのは環金トンネルで、最も後で完成
した2km超の長大トンネルです。
 埋め方が微妙で煮え切らないですなあ…
 …うーむ…
 結局カベらしきものを確認できずです。
 最深部より振り返り。
 結構な延長です。全長は230mほどだったと
言います。もうすぐ東側坑口なのではないでしょ
うか。
 西側坑口まで戻り、シェッドを出ます。
 遺跡のような風合いです。
 坑門の方を見ると…
 ちゃんと坑門が存在します!
 折角なんで、坑門に上がってみます。
 裏側です。
 シェッド真上からの石積み坑門。
 庭坂~赤岩間は煉瓦坑門だったので、新鮮
ですね。
 フランス積みの切石坑門。
 笠石、帯石もフランス積みで、胸壁や坑門と
一体化していますね。
 シェッドの裏側に窪みがあったので、穴がない
かチェック。
 残念ながらそこまで大きな窪みではなく、穴は
ありませんでした。
 後は…東側の坑口に回り込んでみます。

 西側坑門からトンネルに沿って、徒歩道が
続いています。
 フラットな歩きやすい道がずっと続いています。
 そこそこ人が歩いていそうな雰囲気です。
 途中の路肩補強にレールの補強がされており
ました。
 何かしら重要な役割があった模様です。
 東口の坑門が見えてきました!
 あちらは確か現役だったはずですが…
 第二大日向トンネルの東側坑門、だったと
思われる石積みが今でも転用されています。
 突っ込み口は現役線と同じなんですよねえ。
 シェッドで延長されつつも、坑門は残存してい
ると思われます。
 突入は一緒ですが、突っ込む角度をややずら
せているんでしょうね。だから洞内で斜め閉塞
という変わった状況になっておりました。
 銘板がありました。

 
カンカネ
 環金ずい道


 延長は2082mだそうです。

 なかなか数奇な運命を辿る11号トンネル。
 西側はシェッドが秀逸でした。


 さて、ここで踵を返し、行きしなどこで合流した
のか分からない廃線跡を見つけに参ります。

 以降、 
その9 に続く!