串原発電所水路隧道


岐阜県


前半戦

  

           2017年5月訪問

 午前中にいきなり土岐川発電所(多治見電燈
第一発電所)の超過酷な行程を敢行し、皆一様に
やりきった感で一杯でした。
 が、次はそんなにハードに探索する事はない、
はず…ということで、取り敢えず小里川ダムにある
道の駅おばあちゃん市・山岡に向かいます。
 小里川ダムの傍らにある道の駅。GW終盤という
こともあり大盛況。駐車するのに往生しました。
 そこまでしてこの道の駅に来た理由…
 それは、小里川発電所の遺構が移設されている
と聞いたからです。
 それがこれ!
 後方の水車に圧倒されぎみですが、手前の石積
み三連橋梁がそれです。
 現役時の三連橋梁。

 名前を 
與運橋 といいます。

 「町指定文化財で、この與運橋(通称めがね橋)
は、1920年代当時の多治見電灯所(現在の中部
電力)が、小里川第三発電所へ渡るために、地元
産花崗岩を材料にして整備された本州では非常に
珍しい三連式石造りアーチ橋(橋長20.1m、幅員
2.7m)。
 小里川ダム建設工事により水没することから、
国土交通省小里川ダム工事事務所により、2003
年(平成15年)この場所に移築された。」

 現地案内板より。

 扁額の位置と、自然石の位置も忠実に再現され
ていますねえ。
 こうして見ると一回り大きい要石が見えます。

 それにしても、一度バラして移設したんだとは思
いますが、再現するのは大変だったでしょうねえ。
 見事ですねえ。
 でも、やっぱり現役時代のものを見たかったです
ねえ。

 ところで、この與運橋は小里川第三発電所の
人道橋ですが、この小里川第三発電所の多治見
電燈所時代は第四発電所と呼ばれていました。
 
 第一発電所が土岐川発電所
 第二発電所が小里川第二発電所
 第三発電所が小里川第一発電所
 第四発電所が小里川第三発電所

 というややこしい状況になっています。
 要するに多治見電燈第一発電所は土岐川、
第二〜第四は小里川にあるので、場所がかなり
異なります。
 小里川上流、取水口から第四、第二、第三発電
所の順番にあったわけです。
 小里川には最初真ん中の第二が1918年(大正7
年)、下流の第三が1922年(大正11年)、上流の
第四が1925年(大正14年)にできたことになりま
す。
 現在の状況です。
 小里川ダムの下流に小里川発電所があります
が、これは小里川ダムが完成した時に新たに造ら
れたそうです。
 ※2003年(平成15年)6月12日運用開始。
 そのもう少し下流に小里川第一発電所(多治見
電燈第三発電所)があり、現在でも建屋の他、水
圧鉄管などの遺構も多く残されているそうです。
 で、小里川第二発電所(多治見電燈第二発電
所)ですが、これはちょうど「おりがわ湖」表記付近
と推測されますんで、残存は絶望的です。ここには
右下から来る橋爪川に発電所用の人道石アーチ
橋があったようです。
 小里川第三発電所(多治見電燈第四発電所)
はもうちょっと上流で、建屋は水没しているものの、
上部水槽は生き残っている模様です。
 真ん中の第二は諦め、まず上流の小里川第三
発電所の上部水槽に向かいたいと思います。
 小里川第三発電所(多治見電燈第四発電所)
の上部水槽へは対岸に渡らなければなりません。
 そこはうまい具合に真新しい橋がかかっていま
す。
 その名も「おりがわこはし」

 おお!?皆、一様に「小里川小橋」という漢字に
変換します。なかなか風流な名前を付けるではな
いか!と感心していたんですが、対岸の銘板を
見ると「おりがわ湖橋」…
 全員爆笑です。どんだけマニア脳なんや、わし
らは…(苦笑)
 橋を渡って対岸に移ります。
 そして振り返り。

 実は取水口から一番上流の小里川第三発電所
上部水槽までの導水路は辿っていません。
 そんな中、上の地図のポイントに遺構があるこ
とをmt.tellさんが発見しており、確認に行くと…
 ありました!
 明らかな隧道吐口。
 で、コンクリ封鎖されております。
 切石の坑門が確認できます。
 で、アーチ環も確認できます。恐らく石アーチの
坑口で間違いないと思われます。
 せめて鉄格子にしてほしかった(泣)

 で、「5号開渠」のプレートが見えます。
 ということはここから取水口までにあと4つの開渠
があるんですね。
 これは今後の課題と致します。
 坑門上部の様子です。
 やけに端正な切石ですね。

 因みに反対側は土砂で完全に埋没しておりま
す。
 で、このおりがわ湖橋からの道、ウォーキング
コースの一部になっておりました。
 現在地に今居りますが、そこの「P」は現在使え
ません。
 このコース沿いに少し南下しますと…
 このような立派な遺構が!
 これはすごいです。こんな立派な遺構が遺され
ているとは…

 これが小里川第三発電所(多治見電燈第四発
電所)の上部水槽だそうです。
 この上部水槽は私的には結構特殊で、端的に
言うと水路橋の上に乗っかる水槽です。
 余程場所の確保が困難な場所だったんでしょう
ねえ。そのお陰で、こんな要塞の一部のような見
事な構造物になったわけですな。
 まずは水槽の内部から。
 これも特殊ですが、水槽のど真ん中に沢水を逃
がす横断水路橋が通っています。
 わざわざこの位置まで沢水を誘引しているような
水路になっています。
 なんなんでしょう、設計者の心意気でしょう
か(笑)
 こんな感じです。
 横断水路橋はやや傾斜させています。
 いやあ、芸術的ですねえ。
 横断水路橋の端には人が渡れるように石桁が
一枚。
 で、その右側にはオーバーフロー用でしょうか、
切石一枚分の穴が2ヶ所。
 いやあ、拘りがハンパないっす。
 水槽内部から上流方面です。
 意外と小さい隧道吐口。他に見当たらないので
これが吐口だと思うのですが…

 因みにこのようなプレートがありました。
 ここはありがたいことに鉄格子です。
 切石の半円アーチですな!
 側壁が切石積み、アーチは恐らくモルタル補修
ではないでしょうか。
 延々と奥に続いている模様です。風は感じませ
ん。
 そして恐らくあの「5号開渠」に繋がるのではない
でしょうか。 
 そして!こちらが

 小里川第三発電所上部水槽横断橋

 とでも言いましょうか。
 沢水の流れに合わせて傾斜させているところな
んか、非常に細かいですねえ。
 中央の輪石の大きさが異なる為、要石と言って
いいんではないでしょうか。
 経年を感じますが、崩れる気配は一切ありませ
ん。切石アーチの頑強さを十分感じ取れます。
 そして反対側から。
 何だかヨーロッパの城塞都市跡みたいな雰囲気
です。行ったことないっすけど(笑)
 で、こちらが水圧鉄管方面。
 一段仕切りがあります。
 穴だけで水圧鉄管はもうありません。
 しかし隧道といい、水圧鉄管の穴といい、ちょっと
小振りですねえ。
 
 こちらが水圧鉄管が通っていた切り通しです。
 土台と、切り通しの擁壁石積みが残ります。
 振り返り。
 石積み階段と丸い穴。

 これで上部水槽の「器」部分は全てチェックしま
した。本来ならこれで、次!なんですが、先程言っ
たようにこれは特殊物件。「器」の下に「土台」が
あります。
 その「土台」がこれ!
 なんとなんとの3連アーチです。
 平地を稼げないような場所に、窮余の一策!
いや、会心の一策ですな。
 という感じの半橋梁上部水槽。
 まさに言うが易し行うは難しってな感じの素晴ら
しい構造物です。
 自然地形に沿ってやや湾曲もさせています。
 向かって右側のアーチ内部。
 こちらは貫通していたんでしょうか。
 左と真ん中の間です。
 これはどこから来る水なんでしょうか。
 非常に芸が細かいです。
 真ん中は石積みで封鎖されています。
 元々貫通はしていなかったかもしれませんが、
塩ビ穴が見えることから後年補修かもしれません。
 右側は殆ど奥行きがありません。
 こちらも補修されている感じがします。

 め一杯引いて、これが限界!辛うじて3つのアーチが映りました。

 
小里川第三発電所(多治見電燈第四発電所)上部水槽三連橋梁
 これだけでも大興奮の大遺構ですが、ここはそれ
だけに留まりません。
 mt.tellさんが次の大遺構を発見します。
 それは水圧鉄管跡の急斜面を発電所に向かって
下る道すがら…
 こんなものが隠れているんですよ、これが…
 まさかまさかの水圧鉄管橋梁!
 膨大な数の輪石、そして谷積みの坑門石積み。
 よくもまあこれだけの数の切石を積み上げたもの
です。
 よく見ると坑門下半分には目地あり、上半分に
は目地がありませんね。
 そして

 
ほっそい!

 この大きさにしてこの細さ。水路橋ならではで
しょうか。
 左手擁壁の石のでかさが際立ちます。
 仰げば尊し…
 これだけの木組みの支保工を組み上げるのも
とんでもなく大変な気がします。
 よくこんな構造物を産み出せるものです。

 異様に細くて大口径の水路橋梁

 
小里川第三発電所(多治見電燈第四発電所)水圧鉄管橋梁
 真下から見るのと真横からみるのとでは印象が
まるで異なります。
 
 下方から上部水槽方面を見ています。
 右側の擁壁が切れる辺りから切石アーチ橋梁
が始まります。
 この時はまずまず低めの水量だったので、淡い
期待はありましたが、やはり発電所建屋跡までは
辿り着けませんでした。
 あともう少しやと思うんですがねえ。
 振り返り。
 時期が時期ならここも水没していることが結構
あるようです。
 右手のはコンクリ壁です。何かしら発電所関連
に近付いている証ではないでしょうか。

 小里川第三発電所はここまで。小里川第二発電
所関連施設はダムの底と思われます。ので、残り
はダムよりも下流にある小里川第一発電所。旧名
は多治見電燈第三発電所。
 次はそこに向かう事にしました。


 以降、 後半戦 に続く