音水森林鉄道遺構群



中音水篇
その3

 


                  2016年6月再訪


 隧道を経由して、ようやく中音水川上流に歩を向ける軌道敷き。
 大迂回をすることにより、かなり高度を稼ぐことに成功しています。

 土留めの石積みが綺麗に残る軌道敷き。

 暫く進むと、また橋梁が見えてきました。
 そしてここの橋梁はなかなか見応えがあるんです。それは… 


 くの字に連続するコンクリ橋梁
 
 この環境で、よく架かったまま現存するもんですね!素晴らしい!

 一本目の橋梁。揺るぎなく、安定感があります。

 渡橋後、振り返り。
 いいですねえ〜

 で、今立っているこの中洲のような場所、元の場所から見ると橋台はコンクリ、中洲は石積みで造られていることが分かります。
 でで、探索時は知らなかったんですが、帰って著書林鉄の軌跡の地図を見てみると、この中洲から左上の山肌をインクラインが
伸びていたようです。その名も「第四インクラ」。
 インクラインから先は、奥側の橋梁の谷(足谷というようです)を遡る感じで、牛馬軌道が500mほど続いていたようです。
 これはそうと知ってなければ気付けないっすね〜。当然山肌方向の写真は撮っておりません。
 なんでこんな小さな中州からインクラインを伸ばそうと考えたんでしょうか。

 そして足谷を跨ぐもう一方の橋梁。
 こっちはえらい草まみれです。

 草まみれなのは、枕木の残存量によるものでしょうか。
 そこから根を生やした雑草がコンクリ橋梁を覆い尽くそうとしています。

 2本とも渡り切って振り返り。
 いやあ、本当によく残ってますよね…

 まだまだ進む軌道敷き。
 未だ中音水川よりもかなり上部を進んでいます。

 この辺りは薄っすらと枕木の雰囲気を感じ取ることが出来ます。

 そしてこの林鉄遺構で最大の忘れ形見が登場。
 トロッコの車輪が一対。

 見事な残存、保存状態です。2対あったら復元できそうです。

 そして!この林鉄遺構でも屈指の高低差を誇る橋梁が現れます。

 早速下に回り込みます。
 おおお!いい感じですねえ!

 中々の高低差です。
 それにしてもこの林鉄跡の橋梁の残存率は凄いですねえ!確認できる中でこれまでなくなってたのは1件のみです。
 で、折り返す前の下の橋梁から見えていた橋梁がこれだと思います。

 この曲線を描きながら橋梁に接続するラインが美しすぎます。
 格好ええ!
 因みにこのレールは近くに落ちてたものを持ってきただけで、元々あったわけではございません。

 流線形の軌道跡からコンクリ橋梁、そしてその先には切り通しの姿が見えます。
 いいコラボです。切り通しが隧道ならなお良し!でしたけどね。贅沢っすよねえ。

 緑が濃くて、うまく切り通しとのコラボを撮れませんでしたが、雰囲気は感じていただけるかと。

 地味に植生が邪魔をして渡り辛いコンクリ桁。さすがに高すぎて足が竦みます。
 これが鉄橋だったら………どうしたでしょうねえwww

 ここまで渡って初めて橋梁と切り通しのコラボを、はっきりと写真に収めることができました。
 いやあ、隧道でもよかったんとちゃいますか?(笑)

 渡り切って振り返り。
 いやあ、高かったっす。途中の木がうまく手づかみセーブポイントみたいになってました。

 で、見事な切り通し!
 根性の切り立てです。岩盤みたいな地質だから隧道でもよかったのでは?←しつこいw

 振り返り。
 それにしても路面が綺麗だ…

 さらに軌道跡は続きます。

 ここにもレールの遺品が。

 レール同士を接続する部品付きです。これは珍しいです。

 この辺りは、今までで一番路盤があれている箇所です。
 まあ、今までが良すぎたんですがね…。ずっとこのぐらいの状態は覚悟していたんですが…

 この有様です。
 今までにない惨状。これは帰りが思いやられる…って、実は帰りはここを通りません。
 それどころか、橋梁切り通しコラボ、くの字鉄橋、隧道など一切無視してワープします。
 その目論見だからこそ、ずんずん進めるわけです。

 倒木、瓦礫に苛まれながらも辛うじて路盤の体を保つ軌道敷き。

 そんな中でも残る枕木と犬釘。

 そしてまたも遺構が。
 今度は廃屋です。どうやらこの林鉄に携わる林業の方々の宿舎だったようです。

 生き残りの廃屋その1
 風呂とトイレの家屋です。なぜ分かるかと言うと…

 五右衛門風呂と…                             トイレです。

 風呂釜の外壁についている金具扉。
 火入れ、薪投入、炭掻き出し用の窓ってところでしょうか。

 背後の家屋は壊滅しておりました。
 ここが宿舎だったのでしょうか。

 宿舎っぽい遺構の端に、台所の釜っぽいのがありました。

 下段に、生き残り廃屋その2
 これはなんだったんでしょうか。

 窓あり…                                   入り口あり…

 内部です。………???
 何部屋だったんでしょうか…?これではちょっと想像が付きません。
 監視小屋?

 で、その背後の小屋はまたしても全壊…。なぜ???
 全壊の廃屋の中、唯一残った遺構がこれです。
 これは?
 この林鉄跡で初めての煉瓦遺構です。
 やはり釜的な何かでしょうか。

 奥の監視小屋?と手前の全壊建屋。ギャップが著しい…

 さらに引くとこんな感じに。
 手前の遺構はもう何だか分かりません。

 さあ、ここから最終目標の遺構まではあと少しです。

 おおお!見えてきました!
 あれが最後にして、最大の遺構でございます。

 軌道跡にほぼ直角に突き刺さるコンクリ桁。
 そして初めてのコンクリ橋脚の姿が!

 反対側より。
 その遺構は完全に自然と一体化し、植物の楽園になっております。

 植生に支配された橋上を渡ってみます。橋上といっても、あるのはコンクリ桁2本と朽ち果てた枕木があるのみ…
 植生で見えなくなった枕木を誤って踏み抜かないように慎重に前進します。

 植生に惑わされていると…先がない!?
 そう、コンクリ桁は2脚目でぷっつりと途切れます。
 この映像では全くわかりませんね…

 ぷっつり点から振り返り。
 …うーむ…イマイチ伝わりませんね〜

 橋桁を降りて下に回り込みます。
 野太い「A」型の橋脚。2本の桁の間には朽ちかけた枕木が顔を覗かせます。

 ああ…こうなってたのね…
 コンクリ橋脚2本目で本当にぷっつり…で、この先どうなってるかと申しますと…

 この有様です。
 コンクリと丸太が折り重なるように倒れています。
 しかし、コンクリの残骸は分かりますが、この丸太は何?

 おおおおお…こうなっておったか…
 なんと、コンクリ橋脚2本の後は、丸太橋脚2本で対岸に渡っていたようです。
 しかし、なぜ、途中までコンクリで、後丸太???

 その答えはここにはっきりと…
 倒壊した「A」の文字がくっきりと見てとれます。
 どうやら風雨で増水した中音水川の流れに負けてしまったようです。
 しかもまだ林鉄稼働中の頃ですよね。だから急遽丸太橋で復旧を図ったんですね…
 しかしよくこの高さの橋脚に丸太を採用したもんです。これで少しでも復旧が叶ったんであれば凄いことです。


 屹立する丸太橋脚

 2本の本柱に2本の支柱。横に這わせた短い丸太で橋脚と成す。
 そこに奥のコンクリ橋台から這わせていたであろう丸太が一本乗っかっています。往時は2本以上乗っていたものと思われます。

 2本目の丸太橋脚は見事に倒壊しており、先に倒壊したコンクリ橋脚の上に折り重なっております。
 倒壊した丸太には接続させる金具が沢山ついて
います。

 2本目の橋脚は結構損傷が激しい感じがします。
 いつまでこの姿を保てるのか…

 で、もう一つ。
 先程の3径間コンクリ橋(初代の予想。木橋増設で4径間になった?)は、接続が直角に近い状態でした。
 ちょっとこれが不自然でしたが、その通りでそのまま直進するとこのような石積みの橋台のような石積みまで軌道敷きが
続きます。
 最初は引込線で終点なのかと思ってましたが、おろろん氏によると対岸に橋を渡らせていた橋台ではないか、とのこと。
 よって、本当の初代はこの場所で、何らかの理由で2代目の3径間橋梁はあの場所に変更したのではないでしょうか。
 しかし、なぜ?その理由は定かではありません。2代目は侵入角も悪く、スパンも長くなります。
 この石積み橋台は何を我々に語り掛けたいのでしょうか…。
 そのヒントがこの林鉄の軌跡の地図にありまし
た。
 第2インクラや第3インクラは帰ってから知ったの
で、ここでは触れません。
 第3インクラの付け根付近で川を渡りつつ180度
転回しているのが分かります。
 この渡ってるのが3径間橋梁と思われます。
 初代の橋梁が存在していたとすると、第2インク
ラが嘗ては下まで伸びていて、接続していた(た
だしそれだとインクラが滝の谷を横断することにな
ります。)
 或は第3インクラ方面の谷を俎上する軌道が
あった、或は作ろうとしていた、という可能性も
あります。(ただ、これもすぐ上流に滝があるので
困難かも…)
 まあこればっかりはもうちょっと細かく調査しない
と判断しかねます。
 どちらにしても、3径間橋梁渡ってからこんな
スプーンを描いて第2インクラに接続しているとは
思いませんでした。
 もうちょっと追いかけてみたらよかった、と後悔
しとります。

 これまでの地図は全て著書「林鉄の軌跡」からの抜粋です。
 かなり詳細な情報が記されており、ほぼこの通りの軌跡を描いているものと思われます。
 帰りはL.合宿所跡から中音水川の東岸に渡り、道があるようなないような川沿いを下ると、最初に中音水川を渡る鉄橋
(ガーダー)の場所にショートカットできます。
 地図ではそうでもないですが、実際に歩くとかなりのショートカットが実感できました。
 機会があればもう一度奥地を見てみたいと思います。

 中音水篇 取り敢えず