水呑隧道
暗峠越え

 

 
和歌山県は田辺市南部を東西に走る県道
219号線。山中深い場所ですが、現県道は
片側1車線に整備され、短時間で東西に通り
抜けることが可能です。
 その県道の中間地点付近には「水呑トンネ
ル」がありますが、その旧道には「水呑隧道」
があります。
 この県道の南側には、こちらも旧県道隧道
として2本存在(深谷隧道、卒塔婆隧道)し
ます。よく3点セットで言われますが、明確な
違いが1つ。
 「水呑隧道」のみ廃隧道なのです。上述の
2本は一応通り抜けは可能(いつ不通になる
か分かりませんが。。。)です。

 それにしても。。。
 水を呑む隧道。。。この不吉な響き通りの
惨状で、穴入門者だった当時は恐れおののき
退散した記憶があります。
 今回は2年振りのリベンジであります。
 訪問は西側(田辺市街方面)からがスムー
ズだったりします。道は林業の方が整備してい
るようです。反対側は放置ぎみだった記憶が
あります。

 それにしても。。。やはり2年前と状況は全く
変わらないようです。上写真通り、手前は既に
水気たっぷりです。

 おや?意外と装飾的です。
 当時はそこまで見る余裕無かったですが、
風化が著しいながらも、それなりの坑門を有し
ているようです。

 改めてデータですが。。。

 「水呑隧道」 延長293m(or295m)

 1914年(大正3年)高さ2.5m 幅員3.3m
        と、
 1933年(昭和8年)高さ3.1m 幅員3.2m

 という、2種類を確認しております。
 延長がほぼ同じの記述なので、大正3年に
造られた隧道を昭和8年に改修したのでは
ないでしょうか。
 むむう!!

 やはり石積みのようです。これは良い発見
です!
 胸壁は石積み、迫石の巻厚は2層?かな?
洞内アーチも石積みのようです。

 しかしとんでもない風化の仕方です。
 ここまでなってしまう理由は何でしょう?
 扁額がありますが。。。
 風化が著しくて読めません。。。「隧」と「道」
が見えるような気がしますので、おそらく
隧道名だとは思いますが。。。
 隧道前は盛り土されていますので、自然と
視点が上方からとなります。
 。。。相も変わらず水をたっぷり呑んでおら
れますなあ。。。
 内部レポートをネットで見かけない最大の
理由ではないでしょうか。

 それにしても、アーチのぼろぼろぶりは相当
ですなあ。
 所々抜け落ち、欠け落ちしています。
 時はここまで洞内の姿を変えます。
 水はたっぷりですが、長靴を履いていれば
浸水することはありません。泥の流入もそれ
程なく、意外ときれいな水面を保っています。
 洞内は10mも行けば、素掘りのモルタル
噴き付けになってしまします。
 結構いい雰囲気を出す、水呑隧道西側
坑口。
 人為的であろう盛り土が、これ以上の土砂
流入を防いでいるようです。

 アーチの風化具合や側壁の損傷具合が
まさに「廃」景の極みを感じます。
 ずっと入っていっても水上風景です。
 浅かったのが救いです。いつもこうとは限り
ませんので。。。
 素掘りながらも綺麗なアーチに仕上げられ
ている洞内。高さは結構あるように感じ
ます。昭和8年のデータがこの洞内の状況と
一致しそうです。
 また巻きたてが出てきました。
 しかしこちらはコンクリートで補修を受けた
アーチですねえ。ずっしりと安定感がありま
す。
 おっと、崩落があるようです。なぜか浮かぶ
枯れ木の向こうに少々の崩落が見えます。
 歩くとざぶざぶ水面が波打ちます。
 この程度の崩落なら見飽きる程見てきまし
たが、この隧道の崩落はちょっと意外でした。
 で、どこが崩れてるの?
 素掘り。。。んんん?素掘りじゃないなあ。
 石組みアーチ、西側最初に見た石組み
アーチの崩落のようです。

 (クリックオンでアップに。)

 このコンクリ巻きたても石組みアーチ損傷
に対する補修だったのかも知れません。
 崩落から先の洞内。
 。。。?さっき石組みと書きましたが、少し
違うかな?
 一応。。。コンクリの部類かもしれません。
 この不純物の多いコンクリは結構昭和初期
の年代モノのように感じますが。。。
 また巻きたてが変わりました。

 そしてここまで来ると、水が引きました。
 満面に水を呑み込んでいると思われた
隧道にも、陸地が存在しました。
 ころころ変化する洞内。。。またしても素掘り
に。。。モルタル覆いはあるものの、剥離が
ちらほら。。。
 なんか、現役時の管理の大変さが伝わって
きます。
 相変わらず水は引いており、意外と坑口
付近だけの浸水だったようです。
 ここからは素掘り&モルタルが続きます。
 素掘りにデリニエータがひっついてます。
 でこぼこの壁面に当たらないように、との
配慮でしょうが、明らかに後付けですよねえ。
 東口が近付いてきました。まだ水はありま
せん。
 やはりモルタルは経年劣化が早いようで
す。剥離が目立ちます。

 そして、路面には謎のビンが多数。。。
なんだこれ?

 (カーソルオン)
 ついに到着東口。

 巻きたての分だけ水が溜まっています。
 手前の怪しい物体は、マットレス?のよう
です。
 明るい日射しが洞内をいい廃景にしてくれ
ます。
 おお。。。完全浸水。。。
 水面に寝ておるのは看板のようです。おそ
らく通行止めの。。。

 東口から見て、これはアカン。。。入られへ
ん、と思わせるに充分な状況です。
 横たわる看板。。。足もぼろぼろで、もはや
何かを伝える役目に疲れたかのようです。
 そっとしていてあげましょう。。。
 西口が遠くに。。。
 隧道内に不釣り合いのマットレスが
やっぱり異様です。
 ぬかるみ、結構きつい。。。
 ずぶずぶずぶ。。。長靴で限界一杯。。。

 そして、脱出完了!
 こっちのがぬかるみがきついです。

 2年前にも見た光景。何も変わっていませ
んねえ。
 坑門はいたってシンプルな、補修後バー
ジョンではないでしょうか。
 ぬかるみはこんな感じ。。。
 こりゃあ、こっちから入ろうとは思いません
なあ。
 やっぱり西側は荒れっぷりがすごそう
です。
 でも、アスファルトはしっかり残っています。
 水呑隧道の名に恥じないこの廃景。
 少なくとも両側の坑口はその様を見せつけ
ております。
 しかしながら、内部には外から分からない
水呑隧道の”乾いた”姿を見ることが
できました。