(仮)湯川トンネル


和歌山線 隅田−大和二見間


 

 JR和歌山線は海沿いに走る紀勢本線とは違い、県北
部の内陸を走ります。和歌山県内では一貫して紀ノ川
沿いを走っているため、山間部を多く有する和歌山県に
してはその起伏は非常に少ない方と言えます。よって
自然とトンネルを1度も潜ることなく奈良県に突入します。
 奈良県に入ってからも、川沿いや平野部を走ることが
多く、桜井線と合流する高田駅までついに一度もトンネル
を必要としませんでした。
 しかしそれは現在の話です。過去には。。。そう1本存
在しました。
 写真は和歌山県と奈良県の県境付近です。隅田駅か
ら徒歩でもすぐに辿り着けます。
 この踏み切りまでは車でもなんとか来れないことはない
ですが、横断は禁止になっています。
 
 踏み切りを渡ると。。。をを。。。遠くに穴の姿が見えま
す。
 右手にゲートボール場、左手の斜面に墓地という位置
関係の奥手にトンネルの姿を見ることができます。
 砂地の道がそのままトンネルに繋がるかと思いきや、
寸前で右に逸れました。
 それにしても低い峰です。現在線は右の建物の向こう
側、峰の途切れた場所を通過しています。旧線があえて
こちらのルートを採る理由は何だったのでしょうか。
 右に逸れた砂利道はまたも車が通行できない踏み切り
を渡ります。(写真は一度渡ってから振り返り撮影)
 他に抜ける道は無く、原則あの場所は車の進入がで
きないことになります。
 さて坑門です。かなりしっかり造り込まれている印象で
す。ピラスターに笠石帯石を備えて、煉瓦中心の構成で
造られています。
 この路線唯一のトンネルということで、相当気合が入っ
ていたのではないでしょうか。
 紀勢本線の旧トンネルには要石があったので、それよ
りも装飾は少ないですが、それでもきっちりとした造り込
みを感じます。
 迫石の巻厚は4層です。
 振り返りの景色です。
 ここをかつて鉄道が走っていたんですねえ。。。
 内部です。。。
 結構瓦礫が溜まっています。煉瓦アーチも湿っぽく、
少し不気味な印象を受けます。。。
 中から振り返るとやっぱり良い雰囲気です。
 1つとして同じ景色の無い様々な風景を見せてくれま
す。
 支保工の残骸でしょうか。なにかと遺物が残されてい
ます。
 退避坑周辺の石組みは薄くコンクリなどで補修されて
いるのでしょうか。見えなくなっています。
 ここまで100mくらいでしょうか。まだまだ光が届いて
います。
 こうして天井をまじまじと見てみると、夥しい量の煉瓦
を使っているのがわかります。しかしすっかり灰色です
ね。蒸気機関車とか走っていたのでしょうか。
 早くも対岸の光が見えてきました。緩く左にカーブして
います。
 。。。。。。。。。。。。
 そして何より。。。路面が。。。浸水してきました。。。
 この量はちょっとなばいな。。。
 反対側。。。東側坑口の光が水面に反射しています。
こら相当やな。。。
 溜まっているのは雨水のみのようで非常に澄んでいま
す。ただ、長靴でないと浸水します。
 東側坑口に辿り着き振り返り。
 一面に水を湛えています。
 これが真土トンネル東側坑口です。
 西側と違い切石主体の坑門です。

 左右でこれほど違う鉄道トンネルも珍しい気がしま
す。しかしながら造りこみは同じで、素材が切石か煉瓦
かの違いだと思います。

 東側坑口からは猛烈な枯れ籔で、このアングルから
しか写真が撮れませんでした。
 少しカメラを下げると。。。ご覧の籔様(有様)です。。。
 石組みはよく見ると少々亀裂が入っています。迂回
路線の理由の一つでしょうか。。。
 改めて西側坑口です。
 やはり煉瓦中心です。

 和歌山線唯一のトンネル”だった”真土トンネル。。。
しかしながらその勇姿をまだ”現役”で見せてくれていま
す。