旧塩津トンネル


山陰本線 八鹿−江原間


後半戦

 

 見事な坑門を残していた「旧御手洗トンネル」。。。
 しかしそれは北側坑門のことであり、南側はまだ未確認
です。
 そして今、100mほど視界の先に見える光景。。。両側
法面の崩壊による土砂の流入でもあるのでしょうか?
 そんな軽い気持ちで、むしろ路面の浸水状況の方を懸
念しつつ歩を進めました。
 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 路面の浸水はピークに達し、ぬかるみもひどい状況に
なってしまいました。長靴でないとここまでは来れません。
。。。。。。。。しかし、そんなことは問題にならない状況が
眼前に。。。
 数本の丸太も意味が分かりませんが、最大の問題はこ
の土砂の量です。8割以上土砂に埋れる坑口の様子に、
南側の尋常でない状況が想像されます。
 果たしてどうなってるのか???
 土砂の上から北側を振り返ります。
 北側だが異常に明るいその坑口に驚かされます。どうも
水溜りに日光が反射をしているようです。
 改めて坑口なんですが。。。
 どうも右側、山手の斜面が相当崩落して、ありえない程
の土砂が堆積した模様です。
 坑口のアーチ部分も欠落している感じです。
 隙間から這い上がり、すぐ坑口を振り返ります。

 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。。

 なんか変。。。見えるのはアーチ巻厚の3層レンガのみ
で、あと人工物を一切見出す事ができません。
 坑門が崩落してしまったのか。。。
 改めて進軍方向の南側を撮影。。。。。。。。。。。。

 んんんん????

 ナンだこれ?洞門のような細いトンネル?が見えます。
 しかし荒々しく削られているその姿はとても鉄道トンネル
のそれとは思えません。。。
 。。。。。。。。。。。。。。。。。。。右側を見上げてみる。。。

 これは。。。相当崩落が深いことを窺わせます。岩盤の
ような巨大な一枚岩で構成されており、明らかに人の手
で為されたような感じには見えません。
 
 。。。なんか薄々分かってきましたよ。。。この状況。。。
 改めて足元を見ると、崩れた岩盤の巨大な切れ端が
ごろごろ。。。危険極まりない場所である事を改めて認識
し、早く脱出しなくては、と思い始めます。
 この岩の向こう側には先ほど抜けてきたトンネルの口が
あります。
 そして背後の洞門のような短いトンネル。。。

 ようは、元々通ってきたトンネルと短いトンネルは1つで
あったと。。。つまり山肌崩落に伴って途中で、この場所で
トンネルが押し潰された、ということです。。。

 凄まじい現実を理解した途端に恐怖に駆られました。
 ここまで崩落した廃トンネルを見たことがありません。
 短い方のトンネルに入りました。意外と延長は残って
おり、4、5mはあると思います。よくここだけ残ったもので
す。しかしながらヒビの入り具合などから見るに、崩落は
時間の問題かも知れません。
 トンネルの先は鬱蒼とした緑に覆い尽くされており、崩落
地点とは別世界のようです。
 南側から脱出しました。
 ここが正真正銘の南側坑口のようです。
 草木の生長は南側の日当たりのよさから非常に活発
で、最早全容を確認することができません。
 少し下がるともうこの有様。途中が崩落しているか、な
どはおろか、そこに廃トンネルがあること自体確認するの
が困難な状況です。
 で、そこからすぐです。旧トンネルのすぐ隣、海側には
現役紀勢本線があります。御手洗トンネルの次にあるトン
ネルは稲荷山トンネル。195mの延長を有します。
 やはりここも、右手の山側に旧トンネルがあるであろう
と判断し、厚い籔に再び向かいます。
 現役路線の右手にはすでに踏み分けの道がはっきり
できており、廃トンネルの姿を予感できます。
 出ました本日3本目の廃トンネルです。
 やはり北側坑口のほうがはっきり残されております。
 稲荷山トンネル、北側坑門です。
 ここは両サイドの法面が石積みでがっちり施工されてお
り、最も安定感の感じる状況を保っています。
 やはり造りは袖摺、御手洗と全く同じようです。
 立派ですねえ。
 往時となんら変わらぬ面構えを維持しているように見え
ます。いつまでも残って頂けることを願います。
 しかしその願いを打ち砕く光景がこの目に。。。
 左手部分、石積みからレンガ積みにかけて部分的な
穴が開いています。
 これは自然にできるものなのでしょうか。。。
 旧稲荷山トンネル北側坑口より。。。
 やはり北口は日が当たりにくく、植物が生えにくいよう
ですねえ。
 こちらの路面は比較的乾いており歩きやすいです。
 袖摺、御手洗とも何かしらのトラブルがありましたが、こ
の稲荷山トンネルは大丈夫でしょうか。。。
 やはり退避口は同じ造りです。2重レンガの欠円アーチ
に拘っているようですねえ。構造上何か理由があるので
しょうか?
 南側坑口まで、すんなり辿り着けました。水溜りや瓦礫
が多少ある程度です。坑口より先の風景はやはり南側ら
しく緑に覆われています。
 。。。。。多少の瓦礫のみと思っていましたが、結構でか
い落下物が坑口直下に。。。やはり完全に無事とはいか
ないようです。海に面する位置にある紀勢本線は台風の
上陸も多く、風雨に晒されやすい環境にあります。それが
無事に永らえることができなくなる理由でしょうか。
 またも同じ様な傷跡が。。。最早人為的にされたと思わ
ざるをえません。構造調査の為に穴を開けられた、とかそ
ういうことでしょうか。。。勿体無いです。
 南口坑門です。やはり植生が凄くて、上手く全体像を
写す事ができません。それにしても、左手の穴の開きよう
は相当なものです。
 よく見ますと、笠石がない気がします。最初からないの
か。。。少し不自然ですねえ。迫石はいたるところで隙間
が発生しており、その一部は先ほどみた瓦礫として残され
ていました。いつ崩れ去ってもおかしくありません。
 少し離れると、その緑の猛威を思い知らされます。
 旧稲荷山トンネルはひょっとしたら、車窓から見ることが
出来るかもしれません。それだけ現役路線に近い場所に
あります。
 
 これで、紀勢本線の旧トンネル3本発見に至りました。
 これほど南方の地にこれ程の遺構が残されていたこと
で、非常に感動致しました。
 風雨に負けずいつまでも残ってほしいものですが。。。