(仮)市場隧道(北寺家隧道)


富山県


 


                        2009年11月初訪問
             2019年8月再訪

 ここも懐かしい…。
 南側にはあの天下の名険道である富山県道67号線、
池原3隧道の存在が。
 その目と鼻の先にひっそりと遺されるもう一つの
隧道…それが(仮)市場隧道。名称不明であり、東の
大御所は(仮)北寺家隧道としていたりします。
 私は富山の雄、険酷隧さんに倣って(仮)市場隧道を
推していきます。

 国土地理院の地図には、池原3兄弟が強烈な存在感
で記載されております。で、その北側…これまた結構な
存在感で記載されているのが(仮)市場隧道です。

 この地図を見て私も訪問致しました。時は2009年11月
東の雄様も2009年、険酷隧様の訪問記で2011年を確認
しております。それ以降のこの隧道の状況はどうなって
いるんだろう…?私自身も10年前で、ホームページにも
上げずに、PCの中に眠っている写真。記憶も殆ど残っ
ておりません。てなわけで、今回、帰省のタイミングで
急遽再訪することになりました!
 2009年11月初訪問時の写真です。先代のアテンザ
君が映ってます。
 場所はちょうど(仮)市場隧道の東側、南北に縦断す
る新しく造られたか拡幅されたと思われる道の北側か
らアプローチしました。
 2009年は冬季、2019年は8月、夏季の訪問となりまし
た。
 車停車位置から隧道東側坑口へのアプローチ道。
 実はこの道の下に結構な水の流れがします。しかし
橋梁になっている雰囲気はありません。これは暗渠が
潜んでいる可能性があるな…ってことで帰りに確認する
ことに。…じつはこれが結構衝撃物件だったり…
 10年後の写真に戻します。
 手前の杉と檜が異様に成長している気がします(笑)
 道は左にポッキリ…ですが、これは本当の道筋では
ありません。
 本来の道筋は…そう、真っすぐです。道はなかった
ものとされています。
 左は…10年前は造成真っ最中でした。ので、ひょっこ
り顔を出すのも憚られる状況でした。
 今なら悠々と見ることができます。
 おおお…なんと夥しい太陽光パネルが並んでいます。
わざわざこれだけ切り開いて平地を造った理由は、太陽
光発電所でした。

 調べてみると、結構規模の大きい発電所でした。

 SGET富山メガソーラーといい、官民連携で全国展開
している太陽光発電所です。運転開始は2015年2月27
日。出力規模は7.7MWだそうです。
 
 で、もともとこの土地は神通川下流域のカドミウム汚染
田の復元用の土を採取していた跡地だそうです。
 土の採取により広がった土地を有効活用する形でど
うやらこの発電所が誕生した模様です。
 太陽光発電所の為に切り開いていたわけではなかった
んですねえ。
 得心しました!
 ソーラーの反対側は切り開かれた斜面が広がります。
この下に隧道が残っている…と…
 もう少し土が必要だったら隧道にまで開削が及んでい
たかもしれません。
 隧道があるのを知ってか知らずか(まあ当然知ってい
たと思われますが…)、この隧道を遺した理由は何だっ
たんでしょうか。
 今やこの砂利道があるので、隧道は全くもって不要
です。
 元の道に戻ります。
 …さすがに8月…一層道筋が分かりません。
 鬱蒼としてはいるものの、何とか入り込める程に隙間
ができています。
 助かります。
   ここは往時の道筋がはっきり露わになっています。
 狭い道です。
 そしてここからすぐ…

 でた…10年後もしっかり開口してくれています。

 
(仮)市場隧道 東側坑口

 土砂に埋まることなく、造成の煽りを受けることなく、そこに鎮座しておりました。

 …しかし洞内に違和感が…??? 

 むむむむむ!?封鎖…されとる…
 まさかの展開です。これで完全なる廃隧道となってしまいました。 
 木漏れ日が隧道内を照射しています。
 素掘りに簡素な場所打ちコンクリートアーチを施して
います。本当に最低限の処置という雰囲気です。
 2009年11月、初訪問時の(仮)市場隧道東側坑口の
姿です。
 殆どお変わりないお姿を保っていますね!
 これは2019年8月のものです。
 やはり地質は関西とは違いますね。遠州や、東日本
に多い感じがします。この地質、妙に安定感があるん
ですよねえ…
 金網でがっちり封鎖されています。
 中が見えるこの方法は、封鎖の中ではまだ好感が
持てます。坑門ベタ付きではなくセットバックな所もいい
ですねえ。
 うぬぬ…口惜しや…
 西側も封鎖しているんでしょうか。取り敢えず西側に
回り込むことにします。
 真夏ですが、思ったほど藪に埋まっていませんでした
ねえ。助かりました。
 広大なメガソーラー発電所の脇を抜けて西側に回り
込みます。しかしすごいソ-ラーパネルの量ですなあ!
 西側に回り込んできました。
 右側の道からやってきて振り返ったところです。
 隧道への道は左手になります。
 2009年11月時点ではこんな感じでした。
 こりゃあ隧道は完全消滅やな…と思わせるほど開削
されています。
 将来、太陽光パネルが設置されるとは思ってもみな
かったこの光景…
 この時点で採取はほぼ終わっている感じですね。
 さて現在。
 左側に進んでいきます。
 まだ完全には自然に還っておらず、進むことができ
ます。
 古びた柵で通行止めにしてあります。
 そしてその先…
 (仮)市場隧道 西側坑口

 …なんですが、こちらは様子がおかしい…?
 2009年11月の姿がこれです。
 普通に歩いて入れていたのですが…

 めっちゃ埋まってしまっています!なんてこった…。これは…崩壊したのか??? 
 …うーむ…
 これは検証が必要です。
 因みに中央の白っぽいのはトン袋です。
 これが10年前の写真です。
 …うーむ、両側の法面に変化はありません。落盤や
法面崩壊ではない感じです。
 かと言って人為的とも思えない堆積の仕方です。
 
 実はこの坑口、谷筋に穿ってしまっているようで、沢の
水がそのまま坑口の上から降り注ぐ感じになっていま
す。排水樋もないので、雨が降れば滝のように坑口前
に水が飛び出す感じになりそうです。
 で、10年後、雨水に乗って流れてきた土砂が、今のよ
うに溜ってしまったのではないでしょうか。
 水の流れた跡がくっきりです。
 ていうか、水はここしか流れないような雰囲気です。
 なんでこんな場所に隧道を掘ったんでしょ?
 せめて排水樋は必要かと…
 振り返り。
 隧道上から流れ落ちてきた土砂が埋め尽くしていま
す。
 10年前、滴ってました…ぼたぼたと(笑)
 すでに始まっていたわけですな。
 土砂の上に立ってみると、意外と洞内には土砂が
入っていませんでした。
 その訳は、このトン袋と土嚢にあるようです。
 理由はわかりませんが、土砂の流入を人為的に防い
でいるように見えます。
 トン袋を乗り越えてみると…
 あちゃー、当然の結果と言うか、内部は満面の水が
湛えられております。
 うーむ、深いなこりゃあ…
 長靴では全然無理レベルです。
 しかし折角こっちは封鎖なし。
 夏場だし、濡れてもいいや!てことで靴下を脱ぎ、ズ
ボンをまくり上げて恐る恐る潜入…
 ばちゃばちゃ…ずぶずぶ…ぬううううう…
 深かったのは最初の2歩。
 土砂の溜まりが少なく、粘着性がないので越えること
ができました。下手に水がない方が土砂は粘着性が
高まり、足が抜けなくなります。
 何度も登場10年前の姿です。
 セルフで比較できるところが再訪のいい所です。
 昔は何不自由なく入洞できたんですよねえ。
 この先も長靴越えですが膝までは行かないほどの
水深で、奥の瓦礫に辿り着くことになります。
 しかし水が綺麗です。隧道上から滴る天然水がその
まま隧道内に入ってきている感じですな。
 浸る瓦礫。
 崩落が先か、浸水が先か…
 さらに奥へ。
 水没はあそこまでで、そこからは崩落地帯に突入しま
す。
 もうちょっと手前から撮ったと思われる10年前画像。
 当然ながら水没はありません。
 凄まじいほどいびつな洞内。
 崩落により剥離する形で落盤したからこんな天井が
平たくなるのか、もともとそういう掘り方をしたのか。
 振り返り。
 結構な水没ぶりでした。
 もう入洞はこれっきりになりそうです。
 最も崩落の大きい箇所です。
 天井がごっそり抜け落ちているのが分かります。
 崩落地帯を乗り越えると、また少しの水没と、コンクリ
巻きが現れます。
 東側は巻き立てになっております。
 それが坑口までずっと続いていた、はず。
 明らかに途中でやめた感じのする巻き立て。
 無筋コンクリートなんですかねえ。
 やや尖頭ぎみのアーチです。
 巻きたてると一層狭く感じますねえ。
 振り返り。
 巻きた立ての効果を実感できますなあ。
 ようやく水が引きます。
 
 …しかしこの規格では結構長い部類の隧道ですよ
ねえ。
 コンクリート舗装でしょうか。両脇に水切りの溝が付い
ています。
   そのまま何事もなく東側坑口まで到達できました。
 巻きたてれば十分に使える、ということでしょうか。
   はい。金網封鎖です。
 両側されていると覚悟しておりましたが、幸いです。
 あの大水没は想定外でしたが…(笑)
 東側坑口から振り返り。
 西側坑口の上少ししか見えません。やはり西側にやや
下り勾配ということでしょうか。
 てなわけで脱出。
 手前の汚いのは私の靴下です(笑)




 で、股下浸水w いやあ、アホですな
 さて…忘れていません、あの水の音…

 確実に暗渠がある雰囲気です。まあでも時代はそこ
まで古くないと思われるので、石や煉瓦はないと思いま
すが、念のためです…

 これが、リアルヤバいものを見つけることに…
 まずは上流側に降りてみます。
 ところが意外と川床が低くない…ありゃ、こりゃあ土管
か何かかな…
 因みに南側を撮影しています。水は画面奥から左の
斜面筋に流れています。
 で、降りてきた側。北側ですな。
 このまままっすぐ行けば、先ほどの道が横切ります。
 その下を土管が通る…みたいな考えだったんですが、
なぜか川筋は目の前を左に…???
 あらぬ方向に流れていきます。
 谷筋に脇道などあろうはずもありません。
 なのに、水の流れは西側の斜面に突入していってま
す。
 そしてずっと気になっていたこと…こんな穏やかな水
の流れなのに何故か常に「ザーッ」という大きな水の音
が聞こえています。それが道の上からも聞こえたわけで
す。

 その答えが、ここにありました…

 !?

 水の音の正体…それはまさかの竪穴!??? 
 …なんじゃこりゃ?
 完全に人工的に穿った穴やないですか…
 うおおおおおお…
 
 深っ…
 
 どないなっとんねや…なんで竪穴???
 5mくらいあるかな…
 落ちたらマジやばいやつです。
 こんな穴がひょっこりあったらかないまへんなあ…
 壁面まで丸くなっています。ボーリングマシンで掘削
したんでしょうか。
 何故わざわざこんな水路にしたんでしょうか。

 問題はこの水が一体どこに行ってるのか…
 俄然下流側が気になります。
 急ぎ下流側に馳せ参じました。
 上流側と同じぐらいのレベルに水路を発見しました
が、水が流れていません。道そばで水路は途絶えて
おり、この道ができた時に廃止されたのではないでしょ
うか。
 この廃水路は滑らかな岩場で滑り落ちます。所謂
滝になっていたようです。
 そして!下部の川床には水がある!
 ということはあの竪穴の水がどこからか出てきている
ということですな!

 おおお!

 やはりそうなっていたか~ 
 逆三角形の穴から滝になって流れ落ちています。
 なんなんだ、なぜこんなことに…
 右側が廃水路の滝跡だと思われます。
 でも、大雨が降れば復活するかもですね。
 しかしこれは…
 足場がありません。実はここまで来るのにも相当苦労
しました。
 全体的にヌルヌル滑らかな一枚岩のような岩質で、
いつ滑落してもおかしくないです。
 ので、接近はこれが限界でした。
 中に入るにはそれなりの装備が必要です。
 いやあ~めっちゃ見たい!
 漆黒の闇に包まれる逆三角形の穴。
 これがあの竪穴に続くと言うのか…

 いつかリベンジして…みる???

 兎にも角にも、(仮)市場隧道、再訪完了!