(仮)久木隧道


和歌山県


 

 和歌山県西牟婁郡白浜町。
 ここの県道には隧道がある。。。あった?
はず。。。かのトンネルリストには「無名トンネル」
として、延長2m、幅1.2mというとんでもなく短狭い
状態のブツが表記されています。
 その県道の名は県道213号(白浜久木線)と
いい、国道42号線との接点である「庄川口」交差点
から、県道37号線との接点である久木橋たもとま
での県道です。
 。。。なのですがこの県道。。。やってくれます。
 その県道総延長に比してなんと点線道の多い
ことか!!!
 実質県道として黄色で塗られているのは、庄川口
から二股に分かれる谷への分岐地点までです。 
 ご覧のように、谷への分岐から久木橋までは延々
の点線道。。。そりゃあんた、あんまりですわ!
 なんでしょうねえ、こういった県道点線道の意義
はどこにあるんでしょうかねえ?

 で、まず、やっぱり国道42号線の方から攻めました
が。。。ない。。。こんな延長じゃあまあ、消滅してて
当たり前かな。。。という感じですが。。。
 ただ、以前から「あるよ!」という情報を頂いて
いたこと、幅1.2mなら点線道に残ってるかも?みた
いな想定も立つことから、久木橋方面から攻めて
みることにしました。
 さあ、やって参りました。
 今、国道37号(日置川大塔線)から久木橋方面
を臨んでいます。久木橋西詰めです。
 久木橋 曲弦ワーレントラス、で間違いないでしょ
うか。。。
 昭和30年3月竣工と、思いの外古い橋です。

 で、左の未舗装路が、例の点線県道となります。
 未舗装ながらもフラットなダート道です。
 まあ、当たり前かもしれませんが、県道に関する
物証は何ひとつ得られませんでした。
 久木橋から500mほど。。。
 あっという間に車道が終わり!?

 明らかにこれ以上進めなくなりました。
 振り返り。
 広い空間をもって、ダート車道県道としては終点
のようです。
 あの広場から徒歩探索開始。
 。。。やはり。。。

 車などとんでもない道幅となりました。点線道は
正しいですねえ。
 はい、車の場所との差をご確認下さい。
 しかし昔は多少なりとも作業車は通っていたのか
もしれません。
 右側の斜面の崩れはそう古くない感じもしますし。
 路面を守る土留めの石積みも、苔むしながら
しっかりと保っています。 

 出ました!素晴らしい切り立て!
 この道幅でコレほどまでに高い切り立てはなかなかお目にかかれません。
 右側の様子を見てみますと。。。

 ぐをっ!こわっ!

 垂直の崖になっております。

 。。。って。。。
 おおお!!!???
 穴!!!穴開いとるがな!!!

 ぐおおおおおおお。。。。

 こんなんありっすか???
 なんという隧道の光景っすか!?独特の岩質の壁面を上から下まで削りに削ってできたような隧道。。。
 ここら全体が一枚の岩でできているんではないでしょうか。

 おおお。。。
 ある意味最強の美的センスを持っている隧道(。。。いや、洞門やな。。。)です。
 この造形美は狙ってできるものではありません。
 しかし、なんつー脆そうな岩質。。。

 (仮)久木隧道   
1875年(明治8年)竣工  延長2.0m
 限界高 1.6m  幅員 1.2m
  所在路線 白浜久木線

 これがトンネルリストにおけるデータですが。。。
 明治8年???関西にこんなに古い隧道物件はそうそうないように思われますが。。。

 実は全国隧道リストにもデータが残っております。

 
岡阪隧道  竣工年度 不明  延長3.9m
 限界高 2.7m  幅員2.1m  所在路線 三尾川紀伊富田停車場線(旧指定と思われる)

 
スペックはこちらが正しいようにも思えます。
 ただ、岡阪隧道という名前がいまいちしっくりこないのですが。。。(田辺市−上富田町境にある隧道と同じ名前です)
 隧道手前の切り立てを見上げます。
 こりゃあ〜片洞門クラスにオーバーハングしてい
ます。 
 今にも崩れ落ちそうなぎざぎざの岩が飛び出て
います。
 川沿い側の坑門ですが。。。なんと短い。。。
 山肌を支える「支柱」ぐらいのイメージですねえ。
 天井部は。。。
 少しずつ剥がれ落ちている。。。そんな感じが
します。
 反対側から。
 やはり折れてしまいそうな程、細くて脆そうで。。。

 いやあ〜。。。
 もうどうしたらいいんでしょうね。これ。
 取り壊してしまうと、上部の岩盤が不安定になりそうですし、これはこれで立派に役目を
果しているようです。
 折角なんでもう少しだけ。。。
 道が上下に分かれています。
 上の道に看板があります。
 水源涵養保安林

 不明であった谷の名前が載っています。
 白浜久木線、点線道は「鍋津呂小谷」に沿って
峰を越え、牛屋谷に至るようです。
 上段が人道のようですが。。。
 下段にはU字側溝が埋まっているようです。
 どうも下段は水路跡のようですねえ。
 上段、人道の切り通しです。
 切り通し外側の岩盤です。やっぱり岩質は先の
隧道と同じのようです。

 切り通しから先、上下段の様子が最も分かる光景です。
 下段の水路が崖に吸い付くように設置されています。
 振り返ってみると。。。おお!
 人道の切り通しに加え、水路の切り通しも
見えます。

 おおお。。。すんごいぴったりの切り通し。。。
 玉石積みの法面、水路、そして切り通しがいい具合にコラボっています。

 トンネルではなく、切り通し!
 人道切り通しも兼ねる中央部分は、やたら細長いです。
 何か施工主の拘りを感じさせる一品です。

 脱線してしまいましたが、この辺りの地質の成せる業を多分に堪能できて満足です。
 で、本当にここは県道指定されている(た?)んでしょうか。。。