旧端出場発電所導水路遺構群


愛媛県


その4

  

           2018年4月訪問

 意外と平和な第三隧道吐口を抜け、先に進み
ます。
 程なくして…何か発見があった様です。
 むむむ???
 瓦礫で埋まっていますが…これは…
 こ、これは…

 
横断橋

 ではないでしょうか。
 沢水を潜らせるほど大きな沢ではない場合、
導水路では横断橋を設けているのをよく見かけ
ます。
 沢水も導水路に合流させたら合理的かとも思い
ましたが、やはり枯れ木や葉っぱ、瓦礫も混入
してしまうので、宜しくないんでしょうねえ。
 これを、

 
第一横断橋

 と致します。

 横断橋の両ヘリは階段状の煉瓦積み。
 流路は煉瓦アーチが露出しています。
 下り面はコンクリで補強されています。
 振り返り。
 こんな感じで横断橋に接続しております。
 で、この横断橋、内部を確認することができま
せんでした。
 
 第一横断橋の目と鼻の先に、もう一橋見えて
おります。
 おお!あれは状態が良さそうです。
 こちらを

 
第二横断橋

 と致します。

 いい感じですね!良い状態を保っております。
 巻厚3層の煉瓦欠円アーチの横断橋です。
 ご丁寧に水路のヘリを歩く階段付きです。
 内部です。
 側壁はコンクリですな。
 で!アーチ部分が流路に合わせてカーブして
おります。
 いいっすね!かなり綺麗です。
 もう一枚。

 うーん、何度見てもいいラインです。
 いやあ、芸が細かい!
 横断溝上部の流路です。
 やはりこういうことになってしまいますね…
 だから横断溝は必要、と…
 吐口側です。
 いいですね!ほぼ往時の姿を留めている感じ
です。
 続けざまに2つの横断橋を発見し、気を良くして
先に進みます。
 さあ、問題の地点がやって参りました。
 先人の方たちが記す、

 「山ずれ」

 その地点にやってきたようです。
 なんだかわからない状況になっております。
 取り敢えずこのあたりは基礎の石積みは残っ
てます。
 導水路壁面のみ押し出されてしまった模様で
す。
 導水路の流路と、山側のコンクリ壁と石積み
は生き残っているようです。
 外側が全部なくなってますねえ。
 下方にコンクリの壁が寝ております。
 こやつらが押し出された導水路の谷川のカベ
でしょうねえ。
 さあ、この辺りから全く読めなくなってきます。
 進めば進む程、倒壊煉瓦の壁がどんどん下方
に移動していきます。
 そして不思議なことに導水路の土台であろう
石積みもどんどん下がっていきます。
 なんだこれ???
 このヒトカタマリも元の水路の高さからそこそこ
下がった位置にあります。
 しかも導水路の床面と山側の石積みが綺麗に
引っ付いた状態です。
 これが…山ずれか!

 ここからWikipediaの知識です。
土砂災害には、
斜面崩壊(山崩れ、崖崩れ、土砂崩れ、岩崩れ
など)、地すべり土石流があります。
 その中でこれは
地辷りジスベリにあたるのでは
ないかと思います。
 傾斜5度~20度程度の緩い斜面で、地下の特
定の層(すべり面)を境にして、
土塊が形状を
保ちながらずれる
1日当たり10㎜に満たない
くらいのゆっくりとした速さで移動し、数日以上動
き続ける、とあります。
 また、
継続性、再発性があり、始めゆっくりと
動いていたものが一転して早くなったり、停止し
たあと再び動いたりすることがある。
 また、日本では3種の地すべり地帯が知られて
おり、その内の1種が、断層運動による破砕帯や
過去の造山運動による結晶片岩が分布する中
央構造線沿いの徳島県・
愛媛県である。
 結構説得力がありますね!1日1㎝だったとし
て、毎日ずれれば3m65㎝もずれます。
 地震等の突発的な地すべりではなく、中央構
造線特有の地すべりが、導水路が廃止された
後、ゆっくりと起こって行った結果というのが最も
妥当な見解に思えます。
 そしてその地すべりは現在進行形かもしれま
せん。
 暫く瓦礫塗れで判然としなかった水路が突然
現れます。
 この間に明石谷という沢があるみたいですが、
地すべりの影響で消失している模様です。
 もう少し詳しく調べると、煉瓦橋か鉄橋がボロ
ボロの状態で見つかるかもしれません。
 どうです。完璧な姿ではありませんか。
 山側石積み、コンクリ壁、床面、谷側コンクリ
覆い煉瓦壁。水路の体をきっちり残しています。

 
が!

 実はここは本来の水路の位置ではございませ
ん。本来の導水路はもう少し山側です。
 そんなバカな…
 訪問した時は地すべりの存在を認識できず、
大混乱に陥りました。
 振り返り。
 今辿って来た目線の先に水路はなく、忽然と
姿を現します。
 全く以て不可解です。
 このような状態の水路がそこそこの距離続き
ます。
 そして!決定的な状況に出くわします。
 これです。
 最初これを見た時は一同パニックでした。
 下流に向けて水路が駆け上がっている!?
 そんなバカな…
 次に、水路がコンクリの支柱で浮かせていた
のが、支柱が折れてここに倒れ込んだ…などい
ろいろ考えましたが、まさか地すべりとは…
 (いや、これも仮説に過ぎないんですが…)
 なんせ石積みの基礎ごとまるまるずれた状態
になっているんです。こんなの今まで見たことが
ありません。
 いやあ自然の力を思い知らされます。
 上から見てみます。
 …あの水路がある部分は地すべりでずれた…
なんて誰が思うでしょうか?
 水路がこちらから向こうに流れる方向であった
なら、こういう傾斜水路なんだ…と思いこんでし
まうかもしれません。
 水路がずれるのを防ぐ鉄筋入りのつっかえ棒
です。まさか土塊ごとずれるなんて思ってなかっ
たんでしょうねえ。
 アンカーですべり面より下につっかえ棒を打ち
込んでいたとしても、このつっかえ棒が圧力に
耐えられないでしょうね。どっちにしても地すべり
に対応するのは至難の業でしょうか。
 水路の下にも石積みが。
 これもまとめてずれていったというのでしょう
か???
 俄かには信じられません。
 正常な水路から振り返り。
 そこにはただ木の生えた傾斜地が広がるのみ
です。
 …うーむ…
 これが元の位置の水路。
 …ここから手前がずれたんですねえ。

 どれだけ見てももやもやは尽きません。
 先に進みましょう。

 すぐ先にはもう次の発見された構造物がある
ようです。
 地すべり地帯を回避した水路橋。
 何事もなかったかのようにそこにあります。

 竹谷水路橋(第四水路橋)

 明石谷水路橋がひょっとしたらあったかもしれませんが、地すべり地帯に位置し存在を確認できないのでノーカウントです。
 隣の竹谷水路橋は皮肉なぐらい綺麗な状態で遺されておりました。
 振り返り。
 完璧な断面図です。
 橋台は切石とイギリス積み煉瓦を混在させ、
基礎は石積みとなっています。
 丁寧な造りですねえ。
 上部水槽方面。
 こっちも完璧な断面図です。
 うん?沢から鉄のパイプが伸びています。
 地味に沢水を補給する鉄パイプの導水管が
ありました。パイプなら異物が入りにくいでしょう
しね。
 いやあ、良い廃景ですなあ。
 あそこからほんの十数m先ではあんな地すべ
りがあったというのに…
 構造物が盛り沢山でなかなか前に進みませ
ん。しかし、この先も次から次へとバラエティに
富んだ構造物が現れます。

 以降 
その5 に続く!