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三重県は熊野市の奥も奥、大又川に沿いつ
つ北西に向かう国道309号線。途中からは国
道169号線と重複しつつ、和歌山県飛地の北
山村をかすって奈良県下北山村に入ります。
その県境手前にあるトンネルが、この土場
隧道です。何度となくこのトンネルを通過してい
ますが、最初に写真に収めてからは、ただ通過
する「穴」でしかありませんでした。
確かに同路線に高尾谷トンネルの旧隧道が
現役で残っていたりして、この土場にもありえな
いとはいいきれないんですが。。。
一番旧隧道の可能性を否定させるポイントが
実はありました。写真は西側坑口ですが、すぐ
右手にダート道があります。東側坑口にも同様
に南に伸びるダート道があるのです。どう考え
ても、これがこのトンネルが出来る前の旧道だ
ろう、と思ってしまいます。マピオンで確認いた
だければ、そう思い込んでしまうのも納得いた
だけません?
さらに。。。
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私の知るあらゆる隧道トンネルリストでも、
存在するデータと言えば。。。
1958年(昭和33年)竣工 延長 182m
有効高 3.8m 幅員 5.8m
など、これに近いデータのみ。
これらのことから、旧隧道探索の対象に全く
もって入らない場所なのです。
ではなぜ今回探索に訪れたのかと言うと。。。
かの「廃道をゆく」の中に情報が。。。しかも白
黒の小さな写真が一枚だけ。。。
これを見た瞬間目を疑いました。。。まさか!
まさか?でありました。本当にここのことを言っ
テルノデスカ?nagajis様。。。
とにもかくにも現場に急行しました。 |
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現場で悩みます。。。
場所が全く特定できない(旧道の道筋も)の
です。
で、直登してみることにしました。 |
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まずは現行トンネル直上へ。
当然というか、こんなとこに穴が開いている
わけはありません。
もっと上カナ。。。 |
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上部へは作業道のような道筋が続いており
ました。
峰に向かって登れば、運よく旧道に出くわす
かも知れない。。。という期待をこめて登りま
す。 |
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!!!
やはり。。。想像が正しく、広い車道規格の
道筋に登ってきました。。。
写真は東側を撮っています。。。
。。。。。。。。。。。。。。。。。
こっちは後回しにして。。。
背後、西側の旧道と現道の接続地点の確認
を先に行うことにしました。 |
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西側の旧道は現道を真左下に臨み、所々に
こういった鋼鉄製のワイヤーが打ち付けられて
おり、旧車道自体の道幅も狭くなっている気が
します。
相当に現道の影響を受けていますが、この先
大丈夫なのでしょうか。。。 |
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現道にどう影響を受けても道筋は幾分たりと
も残されており、地盤がそれなりに安定してい
ることを窺わせます。 |
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この辺りは、地を這うワイヤーに足元を掬わ
れますが、道筋は非常にはっきりしています。
しかしながら現道との高低差は結構ありま
す。このまま合流しない気がしないでもありま
せん。。。 |
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ついには現道の法面を護るワイヤーネットの
アームまでもが旧道に突き刺さるようになって
きました。 |
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これは。。。もうダメそうです。。。
もはや現道のためだけに存在する空間とな
り果て、旧道の存在意義が完全に失われてし
まいました。 |
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通行限界地点。。。
現道はまだまだかなり下です。どこで繋がっ
ていたんでしょうねえ。。。 |
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西側旧道完全閉塞を確認し、引き返します。
現道から旧道を見出すのは不可能な位置関係
で分断されておりました。。。 |
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で、スタート地点に戻ってきました。
このあたりは車道然とした景色をある程度
見出せます。左手の石垣法面もしっかりとして
いますし、木が生えてなければ、普通にダート
林道規格だと思いました。
そしてこの道。。。明らかに左に吸い込まれて
いくような線形となっています。
そこは思いっきり山肌のはずですが。。。 |
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左手の石垣法面に近付いてみると、布積み
できっちり組まれています。
一方で、奥に見える石垣は随分荒さが見える
気がしますが。
そして、さらに進みますと。。。 |
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!!!!!!!!!!
あ、、、、穴???
程度の異なる石垣の法面に挟まれた道筋
は大崩壊。。。そして、その先に見える黒い穴
の姿。。。
まさに、「唐尾隧道」と全く同じ状態です。 |
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巨大な岩くれの向こうに浮かぶ不気味な黒い
影。。。
最早坑口がどこから存在したのかさっぱり
分からない状態です。しかもなんて固くて脆そ
うな岩質でしょう。。。 |
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見上げれば、全体が岩質で、その上にちょ
びっと植物が育つだけの土があるって感じが
よく見て取れる状況です。
いつ次の崩壊が起こっても不思議ではありま
せん。 |
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振り返れば背後で起きている現実とのあま
りにかけ離れた、穏やかな森林風景にギャップ
を感じます。
両側の法面の現役振りが伝わります。 |
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さて、内部は。。。ををを!???
何と石組アーチの姿が!
巻きがありました、この隧道。
取りあえず内部に大流入はなく、広い空間が
残っていることに安堵しました。 |
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どうも隧道完成時からある石組みではない
ような気がします。
崩落の危険がある為に改修を行った跡だと
思います。しかしながら結局崩落は防げずに
改修石組みまでもが崩壊に至ったようですね
え。 |
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洞底に降り立ちます。反対側の光が眩いば
かりにアーチ状に輝いています。反対側は全開
のようですねえ。これも「唐尾」と同じ。
洞内の大半は素掘りのみで、モルタル拭き付
けもありません。石組みアーチも入り口のみで
した。 |
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土砂崩れさえなければ、現役でも使えそうな
しっかりとしたアーチをしています(でも坑門
部分は崩落してますが。。。)。 |
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少し後退するとあっというまに素掘りに。
西側入り口付近のアーチは崩落している
模様です。 |
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多少の崩落があったのかも知れませんが、
少々いびつなアーチをしています。唐尾よりは
ざっくり掘ってる?感があります。 |
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東側坑口までやってきました。
こっちは石積みアーチの改修はされてあらず
素掘りのまんまのようです。 |
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東側の坑口も相当にいびつな形をしていま
す。少しずつ崩れているんでしょうかねえ。 |
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東側坑口です。
これですこれ!「廃道をゆく」でみた写真と
同じ光景です。
岩質の山肌を貫く完全素掘りの隧道として
誕生したようです。
しかし、手持ちの資料ではこの隧道の存在
を示しているものはありません。昔は国道では
なかったにしろ、幹線道路であれば表記があっ
てもおかしくないと思うんですけどねえ。
「唐尾隧道」は旧隧道の表記があったので
自力で発見に至りましたが、これはムリやわ。。
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折角なので東側の旧道も辿ってみることに。
現道と合流すればそこから辿る事が可能と
いうことになります。
東側の旧道は隧道から出てすぐ、急激な右
カーブで垂直のカベを巻いていきます。
ほぼ真下付近に現国道が走っており、すぐに
は合流しません。 |
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車道を支える法面には石組みの施工が成さ
れており、やはり幹線道路としての機能があっ
たことを裏付ける証拠となりそうです。 |
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かなりの高さでしかも垂直に、乱積みとも見て
とれる手法で積まれています。
相当に不安定な積み方にみえますが、あれ
だけの高さで垂直に積まれても崩れないと
は、すごい技術です。 |
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しばらく進むとダート道が下に見えてきまし
た。このダート道が普通に川沿いを迂回して
いた旧道と思い込んでいました。
いわゆる、土場トンネル完成前の旧道と。。。
しかしまさか、旧隧道があるとは。。。 |
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真の旧道は眼下のダート道と合流することな
く、ぷっつり途切れておりました。
推測ですが、ここからヘアピンカーブで下の
ダート道に接続して、現国道の方に向かって
いたのではないでしょうか。
それにしても、両サイドの旧道取り付き部分
がシャットアウト、川沿いにある幻惑旧道の存
在、旧隧道の存在を示す資料を確認できない、
地図をみても旧隧道の存在は疑えない。。。
自力での発見は絶対不可能でした。
まだこういう隠された隧道はどこかに眠って
いるかも知れません。だからこの趣味はやめら
れませんな! |