丁字ヶ滝隧道


兵庫県


 

 

                       2012年4月訪問

 兵庫県宝塚市、北西の西宮市方面から流れ
る武庫川に寄り添うように走る国道176号線。
 西宮市と宝塚市境では南西方面に片側
2車線の国道に反して、武庫川対岸では。。。
 ご覧のように狭苦しい県道の弱弱しい筋
が。。。
 この路線は兵庫県道377号塩瀬門戸荘線
といいます。
 開発が進んでいる宝塚市街地において、
何故こんな狭い線形のまま存在するのか。
 
 とにかく、こんな場所に一本の隧道が眠って
いるのです。
 北向きに撮影しています。
 一見して狭い県道です。写真の手前から線形
は屈曲しており、対向はお互い譲り合いが必要
です。ここから南へほんの数分で宝塚駅前とは
とても思えません。
 向かって右側、武庫川沿いの岩が見返り岩
です。

 だいぶ切り通していますが、これでも同時に対向するのは無理があるようです。 


 見返り岩手前に架かる橋梁。橋梁自体は何の変哲もないですが、重要な情報が記載されています。
 橋梁名は「見返橋(ミカエリハシ)」、そして川の名称は「丁字ヶ滝川(チョウジガタキガワ)」と言います。
 丁字ヶ滝。。。頗る変わった名前です。「滝」という名称が付くからには有名な滝があるんでしょうか。
 例の物件はこの中に。。。うう。。。
 ちょっと入って振り返り。
 この前は車道。狭い割に結構交通量あるので
す。。。
 川床が見えましたが。。。
 水が流れていませんねえ。水の流れた跡が
ありますが。。。
 しかし、足元が。。。
 えらい瓦礫が山積しています。
 どうやら側面の崖が崩落しているようです。
 悪い足場、慎重に降ります。
 何とか降り切って振り返り。
 うーーむ、大分崩れてますなあ。中央左寄りの
大きな岩から左に向かうと車道に出られます。
 下部にコンクリートの橋梁がありますねえ。
 それと自然石の石組み。
 このコンクリ橋より少し下流に撮影側に向けて
暗渠が掘ってあり、そこから水が流れ出して
います。
 どうやら水は表層を通らずに地下に潜ってい
るようですな。
 そのコンクリ橋からふと前方に目をやると。。。
 むむむむ!!!
 暗い影が見える!!!
 まさにあれでしょうな。。。
 取りあえず、怪しい暗い影は置いといて、
ちょっと川を遡ってみましょう。
 遡りと言ってもほんの10数m程度ですが。
 
 おお!木陰から滝の姿が! 
 植生の影響で全体像が写せませんなあ。
 こんな宝塚市街地にこんな滝があるとは。 
 近くから。
 うーむ、いい感じですな。
 因みに「丁字ヶ滝」は、狩野派の絵を学んだ
山本永暉(エイキ)が描いた、「宝塚八景」の絵
葉書の題材にされました。絵葉書では「丁香飛
瀑」と銘打たれています。
 絵葉書はネットで検索すると結構載せている
サイトがありますので、そちらでそうぞ。
 この丁字ヶ滝は、滝マニア様の間ではかなり
有名のようです。

 そして、かつてはこの滝を臨む位置に茶屋が
あり、そして隧道もあった。。。そうだ。
 この隧道を知りえたのは超有名サイト、日本
の廃道からです。永冨氏が絵葉書1枚から導き
出した廃隧道。詳しくは著書「廃道をゆく2」を
ご覧ください。
 滝壺です。
 山の上には新興住宅地が立ち並び、滝のすぐ
上にコンクリートの堰堤が造られているにもかか
わらず、意外と綺麗な水を湛えています。
 。。。まあ、見た目だけですので、間違っても
飲まない、浴びない、浸からない!
 さあさあさあ!お待ちかねのメインイベント!
 私の嗜好は滝よりも穴でございます故〜
 うーむ不気味な暗い影。。。

 おおお!煉瓦アーチだ!!!
 って既知の情報ですが、実際に目の当たりにするとますますいい! 

 少しお手入れしてみました。
 うむ!綺麗な3層煉瓦アーチである!しかも要石?
 こいつは珍しい。。。
 自然石を突っ込んで要石にしている。。。
 隙間を整形しているものはなんでしょう?まさ
かコンクリートではないと思いますが。。。
 うーむ。。。
 自然石を整形したものでしょうか。
 だったら上の自然石はいらん気がしますが。
 3層の煉瓦巻き。
 丁寧に積んであるようで、廃化して何十年も
経っているはずですが、安定してます。

 内部映像です。
 綺麗な煉瓦アーチ!かなり丁寧な造りです!美麗!!!
 。。。しかしこのアーチに無数にひっつく木片?はなんなんでしょうか。。。???
 そして何よりこの水没!こりゃあ、長靴でどないかなるレベルではないんでは。。。
 どう見ても木片です。
 現役時からのブツでしょうか。
 天井付近のコレは照明でも吊っていたんで
しょうか。

 
 
2016年10月加筆
 hiroさんからの情報提供で、どうも20数年前に
ここに住んでいた方がいらっしゃったそうです。
 その住人が居住するのに、結露した水が天井
から滴ってくるため、この木片にビニールシート
を張って防いでいたそうです。
 また当時は50pほど高床にしており、入り口
にも塩ビの波板で壁を作り、扉まで備えていた
そうです。
 なかなか快適な空間になったのではないで
しょうか。その形跡は今やこの木片とビニール
片のみとなってしまいましたが…
 
 振り返り撮影。
 入ってすぐは土砂が締まっているので普通の
靴でも何とかなるにはなります。
 真中の鉄杭は、以前封鎖でもしていた名残で
しょうか。
 側壁には自然石をうまく並べて積んでありま
す。
 これもかなり丁寧に造ってあります。

 ここまで入ると長靴でないと無理です。
 この廃景が一番好きですな。
 水没から2、3mでぬかるみも深くなり、長靴
でも進めなくなります。
 きびし〜!!!

 以前の私であれば、もうここで撤退!ってなる
んですが、新兵器を導入しております!

 それは。。。
ウェーダー!

 渓流釣りとかで使う、胸元までの防水スーツ
です。これを手に入れてしまったわけで。。。
 今回は本格初導入!です!
 これに着替えて再トライ!

 ざぶ。。。ずぶずぶ。。。ざぶ。。。。。。。。
 ううっ、冷たい。。。
 ぬかるみは幸いそれ程粘着質ではなく、何とか進むことができます。
 枯れ葉などの堆積物も相当多く、踏み込む毎に底の黒いヘドロや気泡がモアっと舞い上ります。
 気分的にいいものではございませぬ。。。
 水没はこのぐらいです。
 最大ではもう少し股下に近かったと思います。
 底に足がしっかり付くので何とか進むことが
できるわけです。
 
 振り返り。ここまで進みました。
 深いよ〜
 フラッシュなしの映像もどうぞ。
 ここまできて。。。先が閉塞しているのが分
かってきました。
 そして左手には。。。ちょうど中間地点くらい
でしょうか、なにか切り込みがあります。
 なんじゃこりゃ?
 自然石の側壁から上部の煉瓦アーチ部分ま
でを切り込み、煉瓦で覆っています。
 天井部は整形された切石を乗せています。
 ほぼ正方形の切り込みです。
 昔何かを置くために開けていたんでしょうね
え。
 ランタンとか置いていたんでしょうか。

 振り返り!
 満面の水没。この廃景はここまで入らないと得られません。。。
 よく側面を見ると、煉瓦アーチ2段目までが汚れています。最大水深があそこまでいったことがあるんでしょう。
 もしあそこまで水没していたら入らなかったと思います。。。

 そして。。。ついに閉塞地点が見えてきました!
 それにつれてまた土砂が多くなり、底も固くなってきました。
 遂に到着!
 ぬかるみの少ない土砂が溜まり、長靴許容
ラインまで上がってきました。
 えらいゴミが多いですが、これは埋め戻され
た際に入ったものか、南側坑口から流れ着いた
ものか。。。
 ここが北側の端点という証明になりそうな
凹みです。
 これって要石が入っていた凹みですよねえ。
 うーむ、そっくり抜け落ちているようです。
 どれが要石だったのかは分かりませんでした。
 うむ。明らかに煉瓦アーチの端点ですな。
 瓦礫は崩落ではなく、外側から押しこめられた
感じですな。
 反対側は業者さんの敷地になっていて、入る
ことができません。
 惜しいですねえ。開口させておいて頂きた
かったですねえ。

 最深部より振り返り!
 この景色が見たかった!!!
 丁字ヶ滝と隧道のコラボ、今でも十分名所に整備できそうですが。惜しいです。