秋霧隧道/深霧隧道

奈良県



  

                   2016年9月訪問

 我がホームで逝っていないトンネルなどない!…と豪語できない今日この頃。
 その内の一つ、しかも煉瓦物件であるそ奴を何故か長年にも亘って放置してきました、が!
 漸く懸案事項であったこのブツ探索に赴く事が叶いました。
 その要因は、お馴染みおろろん教授のとんでもない発言からでした。

 
「煉瓦アーチは深霧隧道それ一つではない」ということ…

 な、なに〜!?そんなことは今まで全く聞いておりません。大体この隧道に関するネット情報は少なすぎます。秋霧隧道は未だ
発見されておらず、完全埋没という噂。おろろんさんも同意見。よって、アーチはこれ以外となりますが…それは一体…???
 兎にも角にも夏場の盛りを過ぎ、幾分落ち着いた気候になってきたため、活動を再開。前日にはお馴染みの前夜祭を執り行い
ました。

 声掛けしましたところ、毎度ありがとうございます!多くの仲間が集っていただけました。
 前夜祭参加は、ひろきさん、Yori-yanさん、でこぴんロケットさん、宮川さん、ピカさん、アルプさん、おろろんさん、そして電機屋さん!
 電気屋さんはまともにお会いしたのは新潟オフ依頼です。
 開催場所は道の駅宇陀路室生。しかし道の駅居酒屋は同じ場所でやったことはないんじゃないでしょうか。毎度見事に違う
道の駅で新鮮です。(三重県紀北町相賀の海山は何回かやったかな…?)
 次回も違う所を押さえましょうかね。
 …で、飲み過ぎた!久しぶりの居酒屋でテンション上がり過ぎて+コンビニ目の前というのが祟って、追加オーダーしたのが
いかんかった…反省しております…

 朝起きたら…おろろん号以外きれいさっぱりいなくなっておる…(ヨリさんは後で戻って来てきくれました)。
 結局探索は私とおろろんさんと、ヨリさんの3名だけということになりました。ちょい寂しいっすね…
 秋霧隧道、深霧隧道は国道369号線の前身、伊勢
本街道の明治新道に遺されています。
 アプローチは西側から。バイパスができたことで旧
となった369号線と明治新道は少しの間重複していま
すが、この地点から東に、旧369号線と袂を分かつこ
とになります。

 明治新道に入る前に、旧369号線を少し北上した地点でおろろん氏が車を停めてと仰ります。
 ここに一体何があるというのですか???
 実は既に見えています。この時点で気付かれた方は筋金入りの変た…

 左側(東側)斜面を見上げると…何かある…???
 どうやら上部に明治新道の道筋があるみたいですが…
 コンデジでズーム!
 おおおおお!?
 あ、あれは…間違いない!

 
煉瓦アーチ だ!

 なしてあないな所に!?

 聞けば明治新道の暗渠と言うから驚きです。
 深霧隧道以外の煉瓦アーチとはまさにこれのことで
した。何ということや…聞いてまへんで!

 逸る心を抑え、明治新道の取り付き口に南下してきました。
 この未舗装路がそれ、とは…今の今まで知りませんでしたな〜

 藪が濃い目の未舗装路。ヨリさん号もここに駐車し、車高の高い私のアウトバックにて潜入します。

 藪は入り口のみで進めば一部を除いてこのような状態の良いフラットダートとなっています。
 ※一部洗堀が大きい個所があるため4駆SUBをお薦めします。
 ダブルトラックに苔むした路面がいい雰囲気を醸し出しています。
 で、この映像は振り返って撮影していますが、この場所に先程の暗渠があるようです。
 えええ???全くもってそんな雰囲気を感じません。ところが…

 あるんですよね…これがまた…
 ほんまに煉瓦アーチです!すげ〜!!!
 道を挟んで向こう側は山肌です。本来はこのような場所に暗渠の存在は限りなく低く、煉瓦暗渠探索の際もこのような場所は
完全にスルーします。よって、普段の目線からだと絶対に発見できない代物です。
 毎度毎度、おろろん氏の目線には恐れ入ります。

 右側には苔むした空石積みの路面擁壁が。それに煉瓦擁壁が続き、そこに煉瓦アーチが。
 紛れもなく道路構造物ですね!信じられない感じです。
 何度も言いますが、道路を挟んで向こう側が凹んでいれば、ああ、なるほど、ってかんじなんですが、普通に山肌です。
 これは反則や〜。 

 壁面は丁寧なイギリス積みです。
 で、2層の半円アーチが左寄りに存在します。計測していませんが、幅は2尺(約60.6cm)ほどだと思われます。
 沢の水を通す目的というよりは、雨水の排水を目的とした暗渠タイプの横断溝という感じです。
 溝に煉瓦アーチとは…明治新道の往時の意気込みが伝わるようです。

 内部です。本当に狭いです。
 奥は予想通り土砂で埋まっています。元はどのように反対側に出ていたんでしょうねえ。

 路肩に向けて破断している模様です。
 側壁もしっかりイギリス積みですねえ。
 取り敢えずさすがに入る気にはなりませんでした。
 アーチ部分は隙間が多いですな。
 2尺のような狭い幅になるとアーチの構造上どうして
も隙間ができてしまいます。

 この角度から見ても煉瓦すら見えません。向こう側は山肌やし…
 こりゃあ絶対見つけられません。おろろんさんは旧国道から見えたそうですが、それもかなりの難易度だと思いますが…

 先に進みます。それにしてもこの苔むした路面とダブルトラックが美麗ですねえ!
 独特のジ○リ感を醸し出しております。
 で、道はご覧の方向に進んでいるんですが、右を見ると…

 少し開けた場所があり、道らしき痕跡も見えます。
 おろろんさん曰く、ここが秋霧隧道への放棄された道筋ではないか、と。
 カーソルオンしていただくと想定ルートお表示します。
 青の矢印方面に歩いて行くと…

 少し鞍部の低い場所に行きあたります。

 ここが秋霧隧道の想定地です。
 明治新道として実用化されたのかは不明ですが、とりあえず隧道はあった模様です。
 何らかの不具合が生じて、現在の迂回ルートに変更された模様です。
 現在はこの有様です。隧道は崩土によって埋まり、そこに檜が植樹され苔むした結果、その一切の痕跡を抹消するに
至っております。これはもうどうしようもありません。 

 振り返り。カーソルオンで想定ルートを表示します。
 オレンジ線が現行新道ルート。大きく鞍部を迂回します。
 赤線が現在残る綺麗なΩ(オメガ)作業道?すぐ山肌にぶつかって終点です。その終点箇所も怪しいと思ったんですが、
方向的におかしいので、ただの作業道かと。
 青線は道的には何も残ってないので、だいたいです。ここから隧道に突入していたのではないか、と。

 現存する明治新道を使い、迂回してきました。
 迂回時には切り通しを通過しますが、それほど困難な行程ではありません。秋霧隧道を放棄するのも頷けます。
 向かって右側奥が秋霧隧道東側想定地です。

 
 奥にはこの2箇所の怪しい場所があります。
 このどちらかが東側坑口であった可能性がありま
す。私的には下段の方が怪しく感じます。
 しかしそれだと相当な量の崩落があったように
感じます。最早今となっては手の施しようがない
感じです。
 秋霧隧道はやはり永遠の眠りについてしまったも
のと考えます。

 秋霧隧道は諦め、深霧隧道に向かいます。
 深霧隧道へは直接車で行けません。途中で駐車して徒歩での進軍となります。 

 車で行けない理由はコレ。いや、獣トラップ檻(箱罠というそうですな)ではなくて…
 そう、崩落です。崩落はこの一か所だけですが、これにより完全に4輪はシャットアウトです。

 振り返り。車はあそこです。
 くの字に曲がった明治新道の下を沢水が潜りますが、残念ながら土管です。こういった怪しい個所は全部ハズレでした。
 そう、
怪しい個所は…(謎)

 崩落個所からすぐ。普通にフラットな路面に戻ります。

 また箱罠です…って…中、なんかいるよ!?

 おおお…イノシシが2匹…いる…
 2匹同時にトラップにかかったのか、或は別で捕らえられたのをここに入れているのか…謎です。飼ってるのかな?
 捕まりたての野生のイノシシは脱出しようと檻にガンガン体当たりするので、顔面血塗れだったりしますが、こいつらはどちらかと
いうと我々の方に鼻を突き出してきます。エサくれ、みたいな仕草です。やっぱ飼ってる?
 臭いがなければずっと見ていられるんですけどねえ。意外とかわいいんです、こいつら。

 先に進みます。このストレートに出てくると深霧隧道はあともう少しです。

 明治新道を沢水が潜ります。
 木桁(丸太)の跡が残りますが、これは往時のものではないと思われます。

 ここの横断溝の側壁は切石積みです。
 天井部はどうなっていたんでしょうか。切石だったのか、今の丸太よりもっと丈夫な木桁だったんでしょうか。
 切石なら残りそうなものなので、木桁の可能性が高いですね。

 振り返り。往時の姿を知りたかったですねえ。

 そして!遂に当方最後の関西車道煉瓦隧道と合間見えます。

 おおお…すんごい埋まってますが…確かに隧道あり!


 神々しい日の光に映える伊勢本街道明治新道の現存唯一無二、煉瓦隧道 

 その名は 
深霧隧道

 長らくお待たせして悪かったな!漸くのご対面です。ウレシー

 煉瓦アーチが破断され、前には切石が散乱しています。
 坑門は既に存在せず、この切石が坑門の残骸である可能性はあります。

 巻厚は4層。永富氏の調査では竣功当時は素掘りで、後年煉瓦巻きされた模様です。
 1883年(明治16年)竣功だそうです。これは古い!

 内部は長手積みの見事な煉瓦アーチ。
 よくぞここだけでも残っていてくれました。
 煉瓦巻きは崩れていないようです。
 煉瓦アーチが途切れた地点から崩落してしまった
模様です。

 最深部から振り返り。空間はこれだけしか残っておりませんでした。
 内側にも明らかに整形された切石が転がっています。元々の坑門の姿はいかなものだったのでしょうか。

 隧道坑門後方には土留めの石積みが残っておりました。
 ということは、この煉瓦アーチ、土被りがない突き出た場所があるんでしょうか。
 隧道前に迫り出させ、ロックシェッド的な役割を果たしていたのかもしれません。

 こうして引いてみると、石積みがツライチで存在するのがわかります。
 なかなか趣深いです。

 一通り西側坑口を堪能したあと、尾根を越えて東側へ。
 …ところが… ありゃりゃ!?杉が伐採されています。皮を剥いて乾燥させる工程までしてあり、あろうことか東口想定地に
て作業される方がお二人。今日日曜日なんすけど…
 作業される方がいたこと、そしてこの杉の倒木が遮り、東側坑口に降り立つことができませんでした。
 これは2次探索にお預けですな。

 すごすご撤退。ここから見ると西側坑口と道の取り付きが良くわかります。

 坑口からの明治新道の様子。
 苔生し感が実によろしいですなあ。

 逆方向から。素晴らしいですね!

 第一次探索終了。車まで戻り、旧国道に戻る道すがら…(画像は深霧隧道方面を向いています。秋霧隧道迂回路の切り通し
が見えています。)

 …実はずっと気になっていることがあります。そう、おろろんさんが最初に見つけていた煉瓦アーチの横断溝。
 あの物件は今までの常識を覆す状態で存在していました。沢が潜りそうな場所はすぐ分かりますが、あの横断溝は全く沢の
存在がなく、しかも山側は山肌です。あれを発見しようとするなら全路線の谷筋を見続けるしかありません。
 引き返し中、そういった隠れキャラがまだないかとこの迂回路の切り通しまでは全てチェックするものの全てハズレ。
 さすがに二匹目のドジョウはいないか…と思っていた矢先…

 上の画像からさらに下っています。ここの谷側斜面は切り通しの場所から見えるんですが、そこに何やら人工物を見咎めた
のであります。
 お二人は先に現場に小走り。私は車を迎えに行き、この場所に来たんですが、その時ヨリさんのマルの仕草と、おろろんさんの
喜声が…おおお!発見っすか!???

 2匹目のドジョウは…いやがった…

 ホントにいたよ、
2匹目の煉瓦アーチ!!! ぎゃああああああ…(喜声w)

 か…完璧だ…おろろんさんも知らなかった2基目、本日新発見です。
 見紛うことなき煉瓦アーチ。またまた突拍子もない場所に存在しました。
 お約束通り、反対側は山肌です。…うぬぬぬ…なんなんだこれは…

 2層の煉瓦アーチ。アーチの真上にはもう煉瓦積みがありません。
 路面から飛び出すような感じで煉瓦積みが存在します。

 内部は…やはり横断溝のようです。
 坑口付近と内部の煉瓦アーチが剥離していますね。別々に施工して繋げたみたいですが、坑門が谷川に押し出されて剥離
してしまった模様です。

 奥はやはり閉塞しています。
 側壁はちゃんとイギリス積みでアーチが長手積みです。
 なんということ…深霧隧道を挟んで西側に煉瓦アーチ横断溝は2基存在しました。

 横断溝になぜこのように力を入れたのか…非常に謎です。
 沢水を通す場所は違うのにねえ。

 こう見てもぱっと見、全く存在がしれません。が、よく見ると杉の足元に煉瓦坑門の角が見えます。
 って、わかるか!こんなもん…
 
 で、気を良くして東側の旧道も探しました。が、同じような煉瓦アーチは発見できませんでした。
 東側の明治新道の様子は、2次探索で東側坑口の探索が実現したらレポを挟ませて頂きます。
 
 取り敢えず、西側探索完了!