煉瓦みち



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煉瓦アーチ
ここでは様々な煉瓦アーチ、石アーチの姿をパーツごとにご紹介します。
物理的なことや歴史的なことは一切抜きで、ビジュアル中心に構成してます。
因みに私が見た煉瓦アーチの範囲内でしか括ってないため、全国に行けばもっと例はあると思われます。

1、始めに
明治、大正前期の交通路において、煉瓦アーチが存在する割合は、上部に土被りが多ければ多い程高くなります。山岳系トンネルなら素掘りも含めて大抵がアーチトンネルです。
 また、鉄道暗渠でも築堤が高くなればなるほどアーチ化される傾向にあります。ただ、その当時の様々な事情からどれだけ築堤が高くても暗渠化せずに開渠(築堤を垂直に切り上げて、
プレートガーダー(昔は木桁)で通してしまう)にする路線や場所もあります。三重県の参宮線などは今の所、どこへ行っても意地でも開渠です。そんなにアーチ嫌いか!(笑)ってくらいです。
 土被りが浅いか、水路が狭い場合は平石積みの暗渠や陶管を使用することも多いです。また最近は多少の土被りでもボックスカルバート(現場打ちのコンクリート函渠(カンキョ:箱型。
因みにアーチ型を拱渠(キョウキョ)といいます。)でも耐用するぐらい技術が進歩しており、近年改修が進んでいます。
 大正後期になるとアーチ型でもコンクリートを使用するようになり、一気に趣が失われていきます。
 従って、煉瓦アーチが残る交通路や水路は、多少の前後はあるもののそれ以前に大体限られていきます。
 私は関西圏を中心に煉瓦アーチを探索していますが、やはり存在する交通路や水路は明治期のものが多いです。明治期に造られた構造物が現役で使用されているって、
素晴らしいと思いませんか?東海道本線なんて、1日何本電車が通り過ぎると思ってんだ!って感じです。それでも100年以上使用に耐えている煉瓦アーチたち。。。
 味も素っ気もなく、すぐひびの入るコンクリートなんてクソくらえ!(暴言失礼)
 私はそんな愛嬌たっぷりの特に煉瓦アーチに入り浸りです。煉瓦なんて色一色で似たり寄ったりの積み方しかできへんやろ?と思ってたのですが、実際数多く見てみるとあるわあるわ。。。
 どいつもこいつも個性的なブツばかり。当時の技師が自らの技術と美意識を表現しようと一心に穴一つに向かったのではないでしょうか。
 。。。てなわけで能書き垂れまくりましたが、私は物理的な構造や歴史的背景など全くもって分かりません。ただ!今確かに残る煉瓦アーチを一つ残らずこの目で見て、ネットという
巨大な共有フォルダに貯め込んで、皆様にも見て頂きたいと思っております。細かいことは置いといて、こんな煉瓦アーチがあるよ!ってのをお伝えしたくてこのコーナーを作りました。
 なんでこんなフォルム?とかどうやって組んでるの?とか質問されても全く分かりません。。。その辺だけは勘弁したって下さい。あくまで、こんなんあるよー的コーナーですんで。。。
2、アーチ環(迫石)
 [1]煉瓦アーチ
 一般的に煉瓦アーチと云えば、洞内天井部のアーチが煉瓦製であることを言います。従ってポータル(坑門)に煉瓦積みがあったとしても、洞内天井部が切石なら石アーチです。
 逆に坑門が切石積みでも内部が煉瓦なら煉瓦アーチです。
 ここで言う[1]煉瓦アーチとは、洞内天井部のアーチではなく、ポータルから視認できるアーチ状に層になった煉瓦積みのことを言います。通常切石でなくても「迫石」言います。
 このアーチ環(迫石)にスポットを当てたいと思います。


 1層巻き煉瓦アーチ
 基本的なアーチ環の積み方は小口面(煉瓦の最も表面積が狭い面)を外に出し、最も表面積の大きい平面同士を繋げてアーチを形成します。
 この積み方が圧倒的多数ですが、例外も多少あります。それはまた後で。。。
 とにかく、この積み方で1層巻きってのは未だ見たことがありません。煉瓦アーチを構成するにあたって、最低2層はなければ構造上意味をなさないものと思われます。
 もし、1層巻きのアーチがあるとしたら、極土被りが少なく、ただ装飾の意味だけで組まれている可能性が高いです。


 2層巻き煉瓦アーチ
 全体的に数が少なめ。鉄道暗渠では径間長が3尺(0.91m)以下の橋梁に多い。3尺橋梁は大阪府内の東海道本線に多い。
 隧道としては淡河川疏水で見られる。車道や鉄道隧道ではほぼ見られない。

 
 2層巻きアーチの例(大阪府:東海道本線:庄ノ川橋梁)                2層巻きアーチの例(兵庫県:淡河川疏水隧道)

 3層巻き煉瓦アーチ
 鉄道暗渠では全体的に数が多い。4尺(1.22m)5尺(1.52m)の橋梁に多い。
 車道隧道では数が少ない。鉄道隧道では殆ど見られない。

 
 3層巻きアーチの例(三重県:養老鉄道:(仮)柚井橋梁)               3層巻きアーチの例(和歌山県:旧池田隧道)

 4層巻き煉瓦アーチ
 鉄道暗渠では最も多いのがこの4層巻きか3層巻きと思われる。
 車道や鉄道隧道でも多々見受けられ、全体的な多数派と思われる。

 
 4層巻きアーチの例(兵庫県:山陽本線:(仮)霞ヶ丘西橋梁)            4層巻きアーチの例(和歌山県:南海高野線:椎出トンネル)

 5層巻き煉瓦アーチ
 鉄道暗渠では一気に少数派となる。大築堤の下の大きな河川や車道などで用いられることが多いようだ。
 車道、鉄道隧道では4層巻きと共に比較的多く見受けられる。

 
 5層巻きアーチの例(岐阜県:東海道本線:黒血川橋梁)               5層巻きアーチの例(大阪府:関西本線:旧芝山トンネル)

 6層巻き煉瓦アーチ
 このぐらいの巻厚になると、滅多にお目にかかれなくなる。鉄道暗渠では稀。
 水路では宇治発電所導水路大築堤の暗渠がある。
 車道、鉄道隧道でもなかなかお目にかかれない。

 
 6層巻きアーチの例(兵庫県:山陰本線:切浜川橋梁)                 6層巻きアーチの例(京都府:宇治発電所導水路:(仮)二ノ尾水路橋)
 
 7層巻き煉瓦アーチ
 鉄道暗渠ではもう殆ど見受けられない。
 関西方面では以下2本を確認。

                       
 7層巻きアーチの例(和歌山県:小田井用水:龍之渡井)               ツライチアーチではないものの、見事な7層巻きとなっている。
 
 7層巻きアーチの例(岡山県:山陽本線:(仮)船坂跨線水路橋)           多層巻きになるにつれて、欠円化の傾向にあるようだ。

 8層巻き煉瓦アーチ
 圧倒的な巻厚。この巻厚にきて鉄道暗渠の登場。扁平大口径に加え、地質の問題もあったのか。
 戦争遺構にも8層巻きが。隧道と言えるかは微妙だがその巻厚は圧巻。砲撃に耐えうる構造に、ということか。

 
 8層巻きアーチの例(京都府:山陰本線:(仮)高内西橋梁)             見れば見る程圧巻。煉瓦総使用枚数が知りたい。

 8層巻きアーチの例(和歌山県:由良要塞:男良谷砲台の隧道)

 [2]半円、欠円、真円?アーチ
 アーチの形状はほぼ半円アーチと欠円アーチに分類できます。そして左右対照が原則です。通常は半円アーチで問題ないと思われますが、土被りが少な目で径間を広げたい
場合に欠円にする傾向があるように見受けられます。真円というのは厳密には今の所視認していません。本当は半円アーチですがその姿があまりにも丸いので真円アーチ括りにしました。

 半円アーチ
 最も一般的な煉瓦アーチ積み。坑門の煉瓦積みとアーチ環両端がぴったりと一致する。
 明治期の暗渠であれば、土被りが多ければ多い程アーチ状になる。

 欠円アーチ
 アーチ環の両側先端が坑門の煉瓦積みと整合しないもの。その欠円具合は様々で、径間や高さによって異なる。
 例外はあるが、一般的に径間(幅)が高さよりも長さがある場合が多い。跨線橋括りの橋梁では欠円アーチが殆どである。

 欠円アーチの例(滋賀県:北陸本線:下辻町浦川橋梁)

 真円アーチ
 厳密には煉瓦製の真円アーチは確認していません。石積みであれば伏水街道第四橋や円通橋などが確認できています。
 

 疑似真円アーチの例(京都府:旧東海道本線:谷口村橋梁)            宮様の石橋様計測で径間1.85m高さ1.8m ほぼ真円状態。
                                                  側壁は1.5段の石積み。厳密には上部アーチと下部逆アーチに分かれる。