大塔宮鉱山遺構


奈良県


 

                    2015年7月

 
 久し振りとなった居酒屋を終え、翌日。
 これまた久し振りとなる探索の舞台は地図の
通り。
 奈良県天川村の観音峯登山口の駐車場に
やってまいりました。
 
 大和の民さんからの情報提供により、この観音
峯登山道の途中、観音平付近に煉瓦アーチがあ
る、ということが分かりました。
 実はちとさんより、以前に情報を頂いていました
がすっかり失念しており、今回再びその存在を
認識するに至りました。
 よそ様のブログに確かに煉瓦アーチの写真が
掲載されています。これはなんぞや…?

 てなわけで、前日の居酒屋を含めて今回のオフ
を企画したわけであります。
 当日の参加者はむねぞうさん、おろろんさん、
私の3名。ひろきさんはお昼のラーメン屋さんの
予約に出向いております。

 

 こちらが登山道の案内図です。
 左下の観音峯登山口休憩所がスタート地点です。そこからハイキングコースに突入します。

 ターゲットはどうやらこの観音平休憩所付近にあるようです。
 1.7kmの登山でございます。平地の1.7kmならいざ知らず、山道ですからねえ。どうなることやら。
 右が休憩所。左がトイレです。
 で、真っ直ぐが登山口!
 なんと。初っ端から吊り橋です。
 吊り橋久し振りですなあ。
 吊り橋の下には山上川の流れが。
 山上川は天ノ川に合流し、十津川村で十津川
となり、和歌山県三重県からは熊野川となって
新宮方面の海に出ます。
 新宮までは相当な距離にあります。てことはここ
はかなりの上流域になります。
 水がとても綺麗です。
 しかし、この日は台風11号がつい2日前に通過
したばかり。その割には落ち着いた雰囲気です。
 ただ、紀ノ川はこの日も濁流でしたので、下流に
は未だ影響が残っているようです。
 おおお、久し振りのこの感覚。
 しっかりした造りなので怖さは感じません。
 ここからはガチに登山道です。
 台風の影響がなければよいですが。
 おおおお…
 登りが始まりました。朝8時頃ですが、すでに汗
ばむ感じです。
 登山道の整備はかなりしっかりされており、足元
の不安はあまり感じません。
 こうやって石積み擁壁も施工されています。
 途中にある、観音の水
 手を洗いましたが、冷たくて気持ちいい!
 さらに登っていきます。
 やはり登山での1.7kmは遠いですな!
 途中、展望台への分岐地点。
 左上にターンして登った先が展望台になってい
ます。
 私等はフツーにスルー(笑)

 第一展望台を過ぎてしばらく行くと…
 ここにきて初めて何かしらの遺構っぽいものが現れました。

 明らかな人工の石積み。
 この橋の下にある谷筋にも石積みがちらほら見られます。
 煉瓦アーチの隧道に関連のある遺構なんでしょうか。
 そこからさらに登ります。
 すると比較的フラットな地形に変わってきました。
 ここが観音平でしょうか。
 その平場に何かがあります。
 コンクリートの構造物です。
 明らかな過去の遺物。
 そう、ここは鉱山関連の施設があった模様です。
 うーむ…なんなんでしょうねえ、これ。
 これだけだと何なのかさっぱり分かりません。
 これは鉄筋が飛び出ています。
 建物の基礎なんですかね?
 この以降は下部に穴が開いています。
 こんな感じです。
 ここから推測するのは不可能でございます。

 そんなコンクリ遺構群のある平場の奥…何やら"いい色"のブツがチラ見できます。
 そちらに突進! 
 
 遠めからすると、ここが煉瓦アーチの坑口かと思ったんですが、近づいてみると違いました。
 が、煉瓦造りであることは間違いありません。

 何かしらの建物の遺構のようです。
 2部屋あったんでしょうか、仕切りがあります。

 側面。ちゃんとイギリス積みになっています。
 上部は小口の縦積みです。
 …それにしても、わざわざ煉瓦を使う理由は?コンクリ時代に敢えて何故煉瓦なんでしょうか。

 ここは長手積みのカベです。
 そして地面よりも深めに施工されています。
 これは何の遺構なのか…?想像の域ですが、坑道掘削用の火薬庫とか?
 一番奥まった場所にあるだけに信憑性ある気がします。

 そしてここは先程の平場から登山道沿いに一段上がった場所です。
 これ、すげー気になります。
 

 完全に崩壊していますが、ここ、坑口跡ではないですか?
 まあ気のせいかもしれませんが…

 そして、同じ平場にあるのがこの遺構。
 これが索道の支柱だったのではないか、と。
 いきなり索道が出てきましたが、wikipediaによると、この大塔宮(大峰)鉱山から南葛古瀬(現在の吉野口駅付近)まで、
駅を設けながら索道が敷設されていたそうです。

 日本鋼管が大峯索道と称して1917年(大正6年)に開設し、翌年7年から運転を開始したそうです。

 で、肝心の煉瓦アーチはどこなのか。
 実は登山道から視認可能でした。左側が登山道です。そして…どこにあるかわかります?
 
 登山道のやや下方、ほぼ平行して口を開けておりました。
 うむ!ネットで拝見したのと全く同じフォルムです。こんな山奥にまさかの煉瓦アーチ!

 2層の欠円煉瓦アーチ。坑門は…一応ざっくりイギリス積みになってます。
 ところどころおかしい部分がありますが…
 内部はやはりコンクリートですな。

 ちょっと掃除しました。うーむ…結構坑門の煉瓦配置がいいかげんですねえ。
 この煉瓦坑門は装飾の意味合いですね。パネル的な感じです。
 アーチは一層のみです。
 あとはコンクリートとなっているようです。
 コンクリ補修で覆っているわけではないです
ね。
 こっちのが見やすいですかね。
 この部分には小口の縦積みが挟まってます。
 結構自由ですな。

 では、内部をチェック…

 はい、一発アウトです。
 4m程でしょうか。その先で巨大な岩と土砂にて閉塞しています。

 上部のコンクリが剥離しております。一応鉄筋入りのコンクリートアーチでした。
 鉄筋の素材は…トロッコの古レールですね!
 アーチ状に曲げて鉄筋に転用しています。

 まれに鉄道暗渠のアーチにも古レールが補強
として使われていますが、鉄筋として使用している
のは初めて見ました。

 洞内奥には、どでかい岩が鎮座しております。
 どうやら陥没してしまったようです。これじゃあどうにもなりません。

 右側の側壁に煉瓦が挟まっています。
 いまいちこの奥の構造がわかりませんな。

 振り返り。
 大塔宮鉱山の坑道は、煉瓦ポータルのコンクリート隧道でございました。
 隧道の上に行ってみると、思いっきり陥没して
おりました。
 こりゃあ酷い。この奥には未だ空間が残って
おるのでしょうかねえ。

 観音峯山の中腹、観音平。このような山中に煉瓦アーチを拝めるとは思いもよりませんでした。