旧端出場発電所導水路遺構群


愛媛県


その10

 

           2018年4月訪問

 濃密な構造物ラッシュに、満腹満足の一行。
 只今の時刻、12時52分。
 5時間20分もの長きに亘り、導水路を舐め尽
したわけでありますが、遂に終わりが近づいて
きたようです。
 水門が現れました。
 どうやら上部水槽に到着した模様です。
 水門は2門あり、水路が分かれております。
 左が閉じ、右が開放状態です。
 水路を分けるカベ。
 何とも言えないいいRを描いていますねえ。
 右側はかなり大きな沈殿池になっています。
 ここに水を溜め込み、不純物を除去していた
模様です。
 では左の水路はというと…
 正面に除塵用スクリーンが見えます。
 ということはあの先が水圧鉄管ですね!
 意外と左側の水路が本線でした。
 右側はやはり沈殿池ですね。
 左側は本線とは言え、先の左側の水門は普
段は使わなかったと思われます。直接水を入れ
ると砂礫や浮遊物が入って来てしまいますから
ね。
 で、左側にオーバーフローの切れ込みがあ
り、その下には…
 余水を受ける槽がありました。
 ここで受けた余水は…
 小さな穴を潜って、これまで辿って来た導水路
の下段にあるコンクリ水路に入ります。
 ねえ、穴、小さいですねえ。
 途中で煉瓦の桝を通過します。
 煉瓦の桝から振り返り。
 この穴から余水は出てきます。
 煉瓦の桝からコンクリの水路に入ります。
 導水路の下段にあり、ちょうど逆走する感じ
になります。
 この先、あのカゲヤ谷横断橋(第八横断橋)
と沈砂池の複合構造物付近まで続いています。
 その複合構造物の下部の槽には接続してい
なかったようですが、どうなってたかな…
 ちょっとはっきり追っていませんでした。
 どちらにせよ、余水はその辺りの沢に流す
システムだったようです。
 除塵用スクリーンの傍に戻ってきました。
 左手には…
 水門があります。
 左手にはオーバーフロー用の切れ込みがあ
ることから、これは排砂門と思われます。
 一方右手にも水門があります。
 これは沈殿池からの水を入れる水門と思わ
れます。
 水門側壁の天端部分の煉瓦積み。
 なかなか幾何学的です。
 沈殿池側の水門の下にも穴が開いていま
す。
 恐らくこの穴は排砂用で、余水受けの槽に
繋がっていると思われます。

 この沈殿池は、上部水槽としては結構な大きさではないでしょうか。
 写真は最奥から振り返っています。
 沈殿池は中央に仕切りがあったようで、半時計周りに水が誘導され、ここで一回スクリーンを通った模様です。
 それから水門に向かう構造だと思われます。
 貯水槽の奥手にこんな煉瓦構造物が。
 何をいれていたんでしょうか?
 最奥からは道が伸びております。
 恐らく上部軌道跡に向かう道と思われます。
 最後の除塵用スクリーンと水圧鉄管の接続
部分にやってきました。
 石階段と煉瓦壁が良い雰囲気です。
 これが水圧鉄管への最終の水門と思われま
す。
 「沈殿池」のカードが下がっています。
 それと「東平(崩壊鉄橋あり。通行困難)」とい
う矢印カードもあります。
 廃止されてからの後付けでしょうか?
 後ろにこれまた謎の煉瓦構造物が。
 穴は開いていないようですが…?
 電気配線設備が残っています。
 何かしら電化されていたようです。
 水圧鉄管側を見下ろす形で撮影。
 なんか煙突みたいなのがありますが…?

 水圧鉄管側に回ってきました…って、なんじゃこりゃ???
 水圧鉄管は取り去られていますが、左側には煙突のようなものが付いたままです。これは一体何???
 内部の様子です。
 イギリス積み煉瓦の段差があります。
 傍らには朽ち果てた小屋が。
 管理小屋でしょうか。

 さらにその脇には…

 おお!いい感じの煉瓦構造物です。
 ここは余水を排出する下部の槽と思われます。上部に排砂門とオーバーフローの切れ込みが見えます。
 拘りぬいた設計、という感じですな!
 さて、十分堪能致しました。
 水圧鉄管脇の巡視階段にて撤退開始です。

 只今の時刻、13時6分。
 何時ごろ道の駅マイントピア別子に辿り着ける
でしょうか。
 一同やりきった満足感一杯で、意気揚々と
歩み始めますが…これがまた想像を絶する苦
行が待ち受けておりました…
 歩きやすい巡視階段です。
 脇には水圧鉄管を受けていた土台が等間隔
に遺ります。
 程なく平地(道筋?)と交差する場所に出まし
た。
 水圧鉄管は、というと…
 …いきなりエラい段差になっており、降りること
ができません。
 なんだろ、この段差…
 まあ、これは迂回は容易でした。
 上部水槽方面に「停車場(沈砂池(左石段を
上がる))」と書かれた矢印カードが。
 
 停車場とは、上部軌道の石ヶ山丈停車場の
ことでしょうか。確かに沈砂池とともに方向は
合ってます。

 因みに交差する道は牛車道ではないかと思
われます。ここを辿ってもいつかは下に辿り着く
と思われますが、とんでもなく迂回することにな
り、時間がいくらあっても足りないと思われま
す。
 上部水槽を振り返り。
 まだこれだけ下っただけなんですよね…
 回り込んできました。
 降りられなかった段差はこうなっておりまし
た。
 おおお…
 これは一体どういうことでしょうか…
 丸い穴は水圧鉄管用で、四角い穴は管理用
階段が付いていることから、人道用の穴、だっ
たはずですが…
 何故か埋められています。
 ということはこの両サイドの石積みも、上の
路面のような場所も発電所が廃止されてからの
ものでしょうか。
 牛車道と思ってましたが、違うのかな?
 まあ今考えても答えは出ませんので、このま
ま下っていきます。
 まだ良い階段が続いています。
 この時は知らなかった、当時東洋一の有効
落差596m…
 本当に勉強不足です。お二人には本当に申し
訳ないことをしました。
 一段が30㎝だったとすると、およそ1987段。
20㎝だったとすると、何と2980段にもなります。
 えらいこっちゃ…
 しかも階段がずっとある保証はどこにもありま
せん。
 案の定、階段が埋没をし始めました。
 下りの場合、ちょっとゴロ岩が紛れているだけ
ですぐ足を滑らせます。
 格段に下りにくくなります。
 完全に廃管理道と化しております。
 本来潜れるはずのコンクリの四角い穴も埋ま
りつつあります。
 …もうこうなったらただの瓦礫の斜面です。
 半ば滑り降りるような感じで行くしかありま
せん。
 一見歩きやすそうですが、階段はほぼ埋没
しており、歩き難い事この上ありません。
 謎の石積み、と謎の切れ込み。
 その先に、ちょっと大きめの構造物が。
 一際大きな水圧鉄管の基礎と人道の穴。
 ここは往時の状態を維持しているようです。
 四角い穴もそのまま下り階段が付き、その先
にも上手く階段が付けられています。
 振り返り。
 ここが最も往時の姿を遺しているのではない
でしょうか。
 そこからすぐ。
 このような綺麗な道と交差します。
 これこそあの牛車道で間違いないと思われ
ます。
 ちょっとここを辿ることも考えましたが、やはり
とんでもない迂回を強いられるため、やはり足
がそちらに向きません。
 …しかし、水圧鉄管の管理道はというと…
 …逝きたくね~
 ここから遂にこの水圧鉄管と管理道の廃化
が顕著になっていきます。

 写真撮影も極端に減り、どこのタイミングで
撮影したものか分からないものも出てきます。
 これは降りて振り返った、どこかの場所です。
 岩場を切り通して水圧鉄管を通しています。
 マシな箇所しか写真を撮っておりません。
 正直言ってこうやってまともに管理階段を下れ
ることも少なくなってきます。
 イバラまみれの植生に遮られ、止む無く道なき
斜面をガサガサ迂回、その斜面もかなりの急
傾斜で、滑り落ちる様に下ります。
 正直ヤバイ感じはしました。本当に生還できる
の???脂汗が滲み出てきます。
 本当にいい場所しか撮影しておりません。
 もはや管理階段を下るのが本当にイヤになっ
てきております。
 実は何回か九十九折れをする牛車道とこの
管理階段は交差します。何度目かの邂逅をす
るうちに…もう限界!!
 ついに牛車道での迂回を決定します。
 だって、牛車道から見る、管理階段の惨憺た
る有様を見たら、そりゃ行く気が萎えます…
 
 とんでもなく緩斜面の牛車道。
 そりゃあ、牛さんが登って行けるようにするた
めですから仕方ありません。
 そのお陰でものすっごい長大な九十九折れ
の道になってしまいます。
 最後まで付き合っていたらエラいことになって
しまう…
 そんな時に出てきた分岐道…これは?
 鉄塔の巡視路のようです!

 「四国中央中幹線」
 左が97号鉄塔、右下が96号鉄塔への道案内
です。左は今歩いてきた牛車道です。
 右下は鉄塔に向かう…鉄塔から先に道があ
る保証はありませんが、このまま牛車道を辿る
と恐ろしい程の迂回…
 もう迷いはありません。巡視路を下る!
 …ここまでの写真がありませんでした。
 何故かまた管理階段に戻って来ています。

 実は、巡視路を下り、無事96号鉄塔に辿り
着いたんですが、そこから下る巡視路を見つけ
られず、たまたま?すぐ脇を下る管理階段を
発見。鉄塔巡視もこの階段を使っていたんぢゃ
ね?という判断をもとにまた管理階段を下るこ
とにしました。
 しかし、結論、巡視路としては使っていなかっ
たと思われます。だって、藪まみれだったんで
すもの…(´;ω;`)

 そんな苦難の道のりの最中、こういった遺構
に出逢えると、少し心が和らぎます。
 …でも足が痛い…
 これが管理階段の最後の写真です。
 これ以降撮影することはありませんでした…

 あまりにもな難行…
 精根尽き果てそうです…
 いつしかまた牛車道と再会し、迷うことなくそ
ちらに浮気。
 もはや辿る辿らないの問題ではない程、一同
疲弊しております。一秒でも早く下界に舞い降
りたい…その一心で歩を進めます。
 仮設のような橋から眺めるささやかな滝。
 …ああ、しんどい…
 住友共同電力「東平線」の札を見つけました。
 左が6号で、右が5号だそうです。
 で、どれがそうなのかは…分かりません!
 
 そんなこんなで…
 到着!!!

 無事県道まで降りてきました…
 いやあ、助かった…
 ホンマに遭難しかけました。いやあ、事前の
しっかりした調査は大切です。反省致します。

 只今の時刻、14時37分。
 上部水槽から下山開始が13時6分。水圧鉄管
のしかも下りで1時間半かかるとこってどんな
トコだよ!?
 本当にケタ違いの落差です。いやあ、まぢ
舐めておりました…
 こんな感じで下りました。
 途中までは管理階段を降りましたが、藪とガレ
が酷すぎて、途中でギブアップ。黒線の九十九
折れ牛車道にシフト。途中で鉄塔巡視路に入れ
たのが大きいです。そのまま牛車道を辿ると
凄まじい迂回になってしまいます。
 これだけの行程で下り1時間半…
 どないなっとんねん…www

 まだマイントピア別子の駐車場まで歩かないといけません。
 疲労困憊の足を引きずるように歩を進めます。
 その道すがら、旧端出場発電所の建屋を最後に見ておきます。
 明かり取りの窓ですね。
 3層の真円アーチに8個の要石。
 窓の形状も独特です。
 玄関もかなり装飾的です。
 間近で見たいですねえ。
 うーむ…なんとも表現できない程の拘りを持
つ窓です。アーチの煉瓦は楔型を使用していま
すね。珍しいです。
 4層の欠円アーチの庇です。
 要石と迫受石がいい感じです。
 こちらは4層の半円アーチです。
 バリエーションが凄い。
 下部のコンクリの下には恐らく水圧鉄管が
通っていたと思われます。
 ということは、振り返ると…
 …ここですな。
 水圧鉄管の管理階段のゴールであり、スター
ト地点…
 もうここから見るだけで既にカオスです。
 もう一生この階段を上ることはないでしょう
な…
 そんな凄まじい状態に陥っておりました。

 しかし、導水路に関してはほぼ全ての遺構を
拾えたのではないでしょうか。しかし残された謎
も少し残っております。
 次回はその補完でまた東平から導水路は訪
れてみたいです。
 水圧鉄管はもう十分だがな!!!(笑)

 というわけで、旧端出場発電所導水路遺構群

 
 補完篇はするかもです。